2017.05.31

バトンのレーシング魂はまだ燃えていた。
熱い走りに復帰待望論も

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

初めての2017年型マシンでバトンは市街地モナコを激走した しかし、レーシングドライバーとしての魂は失われてはいなかった。

 ピットスタートでも、単独で走ればトップ10に入る速さが十分にあることはわかっていた。だから1周目にタイヤ交換義務を果たしてしまい、前に誰もいない状態でプッシュし続け、中団の自分より遅いマシンがピットインしたときには前に出てやろうという意欲的な戦略をバトンは選んだのだ。

「前のザウバーをオーバーテイクするためにピットインするぞ」

 レースエンジニアからの指示を受けて1周目にピットインしたバトンだったが、前を行くザウバーのパスカル・ウェーレインも同じようにピットインして来てしまった。そしてややピット作業に手間取りながら、バトンの目の前にあわや接触というタイミングで割り込んできたのだ。

「あれは危険だよ。僕はピットレーンでリフトオフしなければならなかったんだ。安全とは言えないだろう? あれはアンセーフリリースじゃないのか?」

 危険行為としてウェーレインには5秒加算ペナルティが科されたが、前に出てしまえば滅多なことでは抜かれないモナコでは、それ以上の旨味があった。純粋なペースでは2秒も3秒も速いはずなのに、抜けない。

「彼が前にいて、どうすることもできない。耐えがたい、Painful(苦痛)だよ」