ジェンソン・バトン引退。ヘルメットに刻んだキャリア17年間の想い (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 だから、アブダビのパドックには母親、妹、恋人、友人など大勢の親しい人々を呼び、常に彼らのそばで過ごしている。そして、愛着のあるチームの面々にも、パドックの住人たちにも、笑顔で最後のレースを見送ってほしかったのだ。

「どのサーキットでも『これが最後かも』と思いながらレースをすることはないと思う」

 休養を発表した当初は、そう話していた。しかし裏返せば、それは、最後になるならはっきりと最後のレースだと自覚して走り切りたいという意志でもあったのだ。

 BAR時代から長きにわたってバトンと苦楽をともにしてきたホンダの長谷川祐介F1総責任者は、名残惜しそうに語る。

「ジェンソン自身が満足できるようなレースをして、一旦、有終の美を飾ってほしいと強く思っています。まぁ、逆に後悔を残してまた戻って来てほしいという気もしますけどね(苦笑)」

 バトンの能力を高く買い、また一方では彼の人柄にも魅せられている。ともに働くチームの誰もがそうなのだろう。

「公式的には来年もチームの一員としての契約が残っていますし、レギュラードライバーに何かがあれば当然ジェンソンが乗るわけですから、彼が二度とここに現れないというふうにはあんまり思っていません。でももちろん、気持ちのうえでは『もしかしたら、これが最後のレースになるかもしれない』ということはみんな思っているし、ですから我々もこれが最後のレースだという気持ちでサポートしたいと思っています」

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