名パイロットの死と、室屋義秀の初優勝。激動のエアレースを振り返る (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 とはいえ、室屋が悔恨を残したシーズンは、その一方で大きな一歩を踏み出したシーズンであることも疑いようがない。

「これだけ失敗があったなかで(昨年と同じ年間総合)6位になれたのは、『1勝』があったから。やはり第3戦で優勝できたのは大きい。年間順位は昨年と同じだが、チーム全体の強さは昨年よりかなり上がっている。ピースは揃ってきたので、あとはそれをどううまく組み合わせるかだけ。すでに課題は見えているし、来年へ向けて手応えはある」

 2009年のデビュー以来、恐らく室屋は最も起伏の激しいシーズンを送った。必ずしも笑顔で終われるシーズンではなかったはずだが、しかし、室屋は意外なほど晴れ晴れとした表情で「今年1年、楽しいシーズンだった」と言い、こう続ける。

「勝てるチャンスがあるから、レースをやっていておもしろいが、それだけに失敗すると苦しみも大きい。そこは悩ましいところではあるけれど......。でも、やっぱり機体は速いし、やりがいがある。来年は今年以上に勝てるチャンスを持って、レースができると思う」

 目標には到達できなかった。だが、過去にないほどの手応えも得られたのも、また事実だ。

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