【F1】「伝説のメキシコ」で突きつけられたホンダの厳しい現実

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「水曜日にここへ着いて、すぐに胸が息苦しい感じがして、気圧の低さを感じたよ」

 1992年以来、実に23年ぶりの開催となるメキシコGPに向けて、メキシコシティにやって来たジェンソン・バトンはそう言った。

マクラーレン・ホンダにとってメキシコGPは苦しい週末となったマクラーレン・ホンダにとってメキシコGPは苦しい週末となった 標高2240メートルというこの地では、気圧が800ヘクトパスカルを下回ることもしばしばで、つまり平地と較べて空気が20%も薄いことになる。少し身体を動かせば、息が上がる。この環境に備えて山地でサイクリングなどのトレーニングをしてきたというバトンでも、「もっとも身体に厳しかった10年ほど前のF1で走ったら、大変だっただろうね」と言うほどだ。

「1992年の開催時にもここに来たんだが、今回ここに来て、『違うサーキットに来てしまったんじゃないか?』と思ったほど、見違えるように素晴らしい施設になった」

 フェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表はそう言って、大改修が施されたサーキット「アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス」の設備を賞賛した。とりわけ、フォロ・ソル野球場跡を利用したスタジアムセクションは、そびえ立つ巨大な観客スタンドに囲まれ、他に類(るい)を見ない迫力を誇っている。

 地元出身のセルジオ・ペレス(フォース・インディア)の活躍もあり、チケットは発売から3週間で完売。決勝日は13万4850人、3日間で延べ32万8850人もの観客を動員し、超満員の巨大なスタンドからはメキシコ国歌と、"チェコ(ペレスの愛称)・コール"の大合唱が沸き起こった。

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