【MotoGP】8戦8勝。マルケスが負けない本当の理由 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 ロッシは、土曜午後の決勝レース直前に、乾いてゆく路面を見ながらドライ用のスリックタイヤでコースインする賭けに出た。だが、そこから雨が降ってきたため、ピットへ戻ってウェットタイヤのマシンに交換することを余儀なくされた。ルール上、スターティンググリッドではなくピットレーンからスタートしなければならず、最後尾からの追い上げになった(結果は5位)。

 レース直前のタイヤ選択の賭けが裏目にさえ出なければ、おそらくロッシはマルケスと優勝争いのバトルを展開していただろう。さらにいえば、予選でタイムアタックのタイミングを逃さず、無事に上位グリッドを獲得できていれば、決勝直前にわざわざリスクの高い賭けに出る必要などなかっただろう。そう考えていくと、今回のリザルトはほんのわずかの運や機微の差というよりもむしろ、戦略の微妙な齟齬(そご)や判断ミスが積み重なった結果、ともいえるだろう。

 ロッシは、現在のマルケスが破竹の快進撃を続ける理由について、こんなふうに分析している。

「マルクはリスクを取ることを厭わない。若いし、思い切りがいいよ。でも、毎戦勝つことができる最大の理由は、いまのマルケスとホンダの組み合わせが誰よりも速い、というそのことに尽きる。クレバーで集中力も高いし、判断も的確。ひょっとしたら、シーズン全勝を目指しているのかもしれないね。だから僕の目標は、少なくとも今季どこかで一勝して、一矢報いてやることさ(笑)」

 冗談めかしてそんなふうに語るものの、はたして2014年中にそのタイミングは訪れるのだろうか。ちなみに、シーズン全戦全勝は1968年にジャコモ・アゴスチーニが達成して以来、誰ひとり実現していない。ただし、この年は年間全10戦であった。もしもマルケスが次戦のドイツGPでも勝てば、このアゴスチーニの記録に事実上あと一歩のところまで近づくことになる。

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