【F1】小林可夢偉インタビュー「やりがいもクソもなくて、『やるしかない』」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

―― 勝手なイメージですが、多くの人がF1に比べて全然遅いGTに乗ったって得るものなんかないだろうと思ってしまうのでは?
「いや、それは逆。たとえばウイリアムズなんかはドライバーに『オマエ運転ヘタやから』って一般車で荷重移動のトレーニングとかやらせるくらいやから。GTとか重量のあるクルマの方が、リアが流れた時のコントロールが難しいんですよ。重いからきちんとコントロールしてあげないといけない。“気持ち”ではいけないんですよ(笑)。カートとかは軽いから行けますけどね。重ければ重いほど運転はシビアで、セオリー通りに走らなきゃいけないわけです」

―― そういうクルマの方がセオリーを学ぶのには適している?
「適しているとは言わへんよ。でも、今自分に何が必要なのか、何を勉強するべきなのかということを理解したうえで走れば、十分価値があるんですよ。その成果は(F1で)走ってみないと分からへんけどね。でも、なんかあったときの対応、こういう時にはこうしたらいいっていう引き出しが広がったとは思いますね」

―― ヘレス、バーレーンと計8日間のテストが終わりましたが、現状は?
「メルセデスAMGの1分33秒台なんていうあのタイムを見たら、別世界のクルマに見えてしょうがない。ストレートだって向こうは最高速が330km/hでこっちは300km/h。30km/hも違ってるんですよ。30km/hっていうたら、原付の制限速度ですよ。想像してみてください、道路に立ち止まっててすぐ横をバイクが通り過ぎるくらいの感じで、僕は300km/hで走りながら抜かれてるんやから(苦笑)」

―― クルマは前回のヘレスから進歩していない?
「リカバリー(エネルギー回生)を120kWまでフルに使い始めたことで、クルマとしてはむしろ落ちた。ブレーキングで(回生のために負荷がかかる)リアがいきなり流れるんです。例えば、市販車で6速で走っている時にクラッチを踏んでいきなり3速に入れてドンってクラッチつないだらどうなるか想像してください。リアがバンッ!ってなるでしょ? あれくらいのショックがダウンシフトするごとにリアにくる感じ。ダウンシフトするたびに『キュキュッ! キュキュッ!』って聞こえんねんから。そんなことあり得る?それを300km/hでやるんやから。ホンマに恐い。とにかくブレーキの問題だけはなんとかしないと、まずセッティングがどうのこうのなんて言えないからね。逆に、それさえ解決すれば2秒は速くなるんですけど」

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