『ウマ娘』ではネガティブキャラで知られるライスシャワーが得意舞台で見せつけた真骨頂 (2ページ目)
馬場は重。いつも以上にスタミナが問われる条件のなか、ゲートが開くと、逆襲を目指すベテランホースは7番手につけた。いつもどおり、頭の低いフォームで静かに追走していたが、2周目の向正面に入ってから黒い馬体がスッと動いたのである。4番手までポジションを上げたライスシャワーが、3コーナーの入口で早くも先頭に立った。
京都競馬場には「淀の名物」とされる坂がある。ちょうど3コーナー付近が丘のようになっており、登って下る形になる。長きにわたり、この坂では「動かない」のが京都の長距離戦の鉄則とされてきた。しかし、ライスシャワーはこのゾーンでロングスパートを敢行したのだった。
同馬の馬上にいたのは、長年コンビを務めてきた的場均騎手。お互いを知り尽くした人馬が取った大胆な戦法に、場内は湧いた。曇り空のなか、4コーナーではライバル17頭を引き連れて直線に入った。
そして直線に向くと、漆黒の馬体はさらに力強く加速し、他馬を引き離す。無尽蔵のスタミナを誇示するかのように先頭を走り続けた。だが残り100mすぎ、大外から猛然と追い上げてくる馬がいた。1歳下のステージチャンプだ。
ライスシャワーが粘りきるのか。それともステージチャンプがかわすのか。ゴールは、ちょうど2頭が並んだところだった。
ゴール板を通過した瞬間、手を挙げたのはステージチャンプに騎乗していた蛯名正義騎手だったが、軍配はハナ差でライスシャワー。異例のロングスパートによる奇跡の復活劇に、テレビ中継のレース実況を務めた杉本清アナウンサーは「メジロマックイーンも、ミホノブルボンも喜んでいることでしょう」と伝えた。
それまでライスシャワーが勝ったGⅠは、敗れた側の無念がピックアップされることが多かった。しかしこのレースでは、ほとんどの人がライスシャワーの勝利を祝福したに違いない。
こうして、万人のヒーローになったライスシャワーだが、続くGⅠ宝塚記念(京都・芝2200m)で悲劇が起きる。レース中に骨折を発症し、転倒するアクシデントに見舞われたのである。
結局、回復の見込みはなく、その場で生涯の幕を閉じた。本来阪神競馬場で行なわれる宝塚記念がこの年、京都で開催されたのは何かしらの因縁だったのか......。
ヒーローになった直後、この世を去ってしまったライスシャワー。それから長い月日が経とうとも、この馬の勇姿が色褪せることはない。京都競馬場にはライスシャワーの記念碑があり、手を合わせるファンの姿が今も数多く見られる。
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