『ウマ娘』でも描かれた伝説の数々...芦毛の怪物オグリキャップが最後に見せた奇跡の激走 (2ページ目)
このように、さまざまな名シーンを作った怪物だが、日本競馬界屈指の伝説となったドラマがある。引退レースの有馬記念で見せた復活劇だ。
1990年、6歳になったオグリキャップは、春のGⅠ安田記念(東京・芝1600m)をレコードタイムで制するなど、一層の強さを見せつけていた。しかし秋になると、かつてない不振に陥る。GⅠ天皇賞・秋(東京・芝2000m)では1番人気ながら6着、続くジャパンCでは4番人気で11着と大敗してしまったのだ。
年齢的にも上がり目はないと見られ、「オグリは終わった」という声も囁かれ始めた。
そうした状況にあって、陣営は続く有馬記念を引退レースに決めた。そしてこのレースでは、天才・武豊騎手が安田記念以来2回目の鞍上を務めることとなった。
当日は、単勝4番人気でレースを迎えたオグリキャップ。この人気は、勝ちを期待してというより、最後のレースだからこそ、今までの感謝を込めて馬券を買った人が多かったのではないだろうか。それほどここ2戦の走りは"らしさ"を失い、有終の美を飾るには難しい状況にあったのだ。
ゲートが開くと、オグリキャップは中団を追走。武豊騎手と息ぴったりの折り合いを見せる。動きを見せたのは、3コーナーに差し掛かったあたり。落ちついた様相でレースが進むなか、徐々に芦毛の馬体が外から先団へ進出していった。武豊騎手の手はそれほど動いていない。オグリキャップ自ら進んでいったような雰囲気だった。
今日は勝てないまでも、これなら健闘できるかもしれない。ファンのそんな想いが去来するなか、怪物はそのまま外から先頭に並びかけて直線へ。明らかにここ2走とは違う雰囲気を見せた。
内から同じ芦毛のホワイトストーン、外からはメジロライアンが猛追するが、この日のオグリキャップは譲らない。中山の急坂で先頭に立つと、そのままライバルを封じ込んで1着をもぎ取った。中山競馬場には地鳴りのような歓声が轟いた。
ゴール後は、武豊騎手が左手を高々とかかげ、その後、すぐさま"オグリコール"が場内に鳴り響いた。涙を流す人がたくさんいたのは言うまでもない。日本の競馬史に残る瞬間だった。
レースが終わってからも、奇跡の復活劇を特集する番組などが作られ、オグリ旋風はしばらく続いた。このレースを日本競馬のベストシーンに挙げる人も少なくない。
地方から中央へ移籍し、数々の伝説を残したオグリキャップ。ファンにさまざまな夢を見せてくれた屈指の名馬である。
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