安田記念、ジャックドールはマイルGIでも勝ち負けを演じられるか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 ともあれ、藤岡調教師が挙げる根拠が「(マイルでも)いい勝負になる」と見るジャックドールの、能力的な下地を示すものであることは間違いない。それに、もともと東京コースのマイル戦は、「スピード一辺倒ではダメ」「2000mもこなすスタミナやスピードの持続力が必要」と言われてきた。

 ジャックドールは、その条件もクリアしている。マイルを走るスピードも、そのスピードの持続力も、スタミナの裏づけも、存分にある。

 ゆえに、今年の安田記念では、勝ち負けはともかく、ジャックドールが「台風の目になる」と見ている関係者は少なくない。

 だが、こうした挑戦の歴史を改めて振り返ってみると、そこで勝ち負けを演じることは、相当高いハードルであることがわかる。

 直近でも、いい例がある。GIヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)だ。大阪杯で2着と奮闘した牝馬二冠馬のスターズオンアースが、単勝2.5倍の1番人気に支持されながら3着に敗れた。

 出遅れ癖がネックと言われていたが、この時はゲートもスムーズに出て、これといった不利もなく直線を迎えた。しかし、ふだんであれば同馬の見せ場となる勝負どころで振るわず、もどかしいくらいにジリジリとしか伸びなかったのだ。その結果、先に抜け出したソダシ(2着)を捕まえきれず、内から伸びてきたソングライン(1着)にかわされて3着に終わった。

 鞍上のクリストフ・ルメール騎手はレース後、「先着した2頭はマイルのスペシャリスト。瞬発力で負けた」と敗因を語った。

 マイルには、マイルのレースで求められる瞬発力がある。いかに本質的なポテンシャルで圧倒するスターズオンアースといえども、マイルのスペシャリストがフルにその瞬発力を発揮すれば、敵わないということだろう。

 もうひとつ、大阪杯がGIに格上げされて以降、同レースの勝ち馬が安田記念に挑戦した例が一度だけある。2018年のスワーヴリチャードだ。

 同馬も先述のスターズオンアースと同じく1番人気に推されたが、3着に敗れた。勝ったのは、当時マイル路線で頭角を現わしてきた"上がり馬"モズアスコット。2着は前年のGINHKマイルC(東京・芝1600m)の覇者であるアエロリットだった。いずれも、マイルのスペシャリストだ。

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