オークスでも「テッパン」とされる女王リバティアイランドには、本当に死角はないのか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Eiichi Yamane/AFLO

 リバティアイランドは最後の直線を迎えても16番手という位置にありながら、鞍上の川田将雅騎手がゴーサインを出すと、出走メンバー最速にして唯一の上がり32秒台の末脚を炸裂。それも、不利な大外から一気に脚を伸ばして、真っ先にゴール板も駆け抜けた。

 トラックバイアスも、位置取りも、ペースもまったく問題にしないこの勝ち方は、一頭だけ異次元の競馬をした、といっても過言でない。

 前出の専門紙記者が言うには桜花賞のレース後、川田騎手は「ついに出ました」と語っていたという。その意味について、同記者はこう解説する。

「武豊騎手にとってのディープインパクト、福永祐一元騎手にとってのコントレイル。そういう馬たちと同じように、自分にも自らの代名詞となるような怪物級が『ついに出た』という意味だったのではないかと思います」

 いずれにせよ、それはリバティアイランドに対する最大級の賛辞であり、川田騎手は桜花賞でそれぐらい確かな手応えを得た、ということだろう。

 となると、オークスもリバティアイランドがテッパン。二冠馬誕生は間違いないといったところか。専門紙記者が言う。

「もちろん競馬ですから、泥んこの不良馬場になった時にどうか、道中不利を受けた時にどうかなど、不確定要素はあります。でも、ふつうに走ってくれば、この馬は負けません」

 距離が800m延びる点についても、「心配はない」と専門紙記者は語る。

「この時期の3歳牝馬に距離適性はあまり関係がない。それ以上に大事なのは、ポテンシャル。オークスは、ポテンシャルが距離適性を凌駕するレースです。距離延長には何の問題もありません」

 まさしく「死角なし」である。

 だが、そこまで"万全"を強調されると、気になるケースを思い出してしまう。ハープスターのことである。

 2014年の桜花賞、後方一気の競馬で鮮やかな勝利を飾ったハープスターは、続くオークスでも単勝1.3倍の圧倒的な支持を集めた。しかし迎えた本番、再び後方待機から自慢の末脚を駆使したものの、勝ち馬にクビ差届かずの2着に終わった。

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