ニエル賞で完敗を喫したドウデュース。はたしてそこに、凱旋門賞制覇への「答え」があるのか (2ページ目)

  • 土屋真光●取材・文 text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 日本競馬最大の悲願ともされる凱旋門賞制覇。同レースにはこれまで、1969年のスピードシンボリを皮切りに、日本調教馬は延べ29頭が出走してきたが、最高位は2着(4回)と、「世界最高峰」とされる一戦の分厚い壁にずっと阻まれてきた。

 その要因として、かつては欧州調教馬とのレベル差が挙げられていたが、日本馬も世界各地のビッグレースで結果を出すようになった昨今、馬場適性、馬場への適応力が最大のポイントとされている。まだ正解がないなか、時に長期滞在で現地仕様にチューンアップ、時に日本で仕上げてからの直前輸送など、馬のタイプにも合わせてその辺りは試行錯誤が繰り返されている状況だ。

 ドウデュースを管理する友道厩舎は、2016年の凱旋門賞にマカヒキで今回と同じ臨戦過程で挑んだ。この年はトライアル、本番ともにシャンティイ競馬場で開催され、前述のとおりマカヒキは遠征初戦のニエル賞を快勝したが、本番では14着に敗れている。

 トライアルを勝つことはうれしい反面、負けた時よりも課題が見えにくくなる。同時に、そこからもう一段階踏み込んだ調整もしにくくなる。海外遠征での、慣れない地で調整となれば、なおさらだ。

 勝たなければいけないのは、トライアルではなく、凱旋門賞である。

 そこで今回、友道厩舎は過去の経験を生かして、あくまでもニエル賞は"試走"という位置づけに徹したことは頷ける。

 ただ、試走モードであったとしても、見る側としては、それなりに格好はつけてほしかった、という思いはある。たとえ仕上がり途上だとしても、ここで4着という着順で負けていい相手だったのかというと、そうではないからだ。

 勝ったシムカミル(牡3歳)こそ、前走でも3歳限定のGIパリ大賞(パリロンシャン・芝2400m)で2着と好走しているが、2、3着馬は実績的には明らかに格下である。加えて、凱旋門賞の歴史を振り返ってみても、GI以外の前走で4着以下に負けた馬が勝ったことは、重賞に格付けが導入されてからは一度もない。

 こうした一面を見ると、ドウデュースが置かれた状況は決して芳しくない。が、思えばドウデュースはこれまでも、レース直前でなければ、格下との併せ馬で後れをとることもしばしば見られた。大一番となる日本ダービーの前にも、皐月賞トライアルの弥生賞で苦杯をなめ、皐月賞でも勝ったジオグリフに2馬身以上の差をつけられて3着に負けている。

 だが、目標に定めた日本ダービーで圧巻の強さを披露した。次なる目標となる凱旋門賞に向けても、一度きっちり負けることで見えてくるものがあるのかもしれない。そこから、隠された"正解"が見出せる可能性もある。

 期待と不安――。はたして、ドウデュースはどんな走りを見せるのか。3週間後の本番に注目である。

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