ウマ娘でも描かれるダイワスカーレットとウオッカのライバル関係。秋華賞や天皇賞・秋で見せた伝説の名勝負 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Kyodo News

 ここでもダイワスカーレットが前につけ、ウオッカがその後ろを追走する位置関係。そして直線、ウオッカは前走のように外から並びかけようとするが追いつけない。雄大なウオッカの漆黒の馬体が迫ると、同じく雄大な馬体を持つダイワスカーレットの栗毛の馬体が突き放す。結局、最後まで先頭を譲らず、ダイワスカーレットが桜のタイトルをつかんだのだ。

 この逆転劇の裏には、ダイワスカーレットと全戦でコンビを組んだ名手・安藤勝己の計算があった。チューリップ賞では、最後の直線でウオッカが並んでくるギリギリまで最後の追い出しを我慢。ゴールまでより短い距離での瞬発力勝負を挑んだ。

 その戦法で跳ね返されたことから、安藤は「瞬発力勝負では分が悪い」と判断。桜花賞ではウオッカが並ぶ前に突き放す、ロングスパートの戦法で勝ったのだった。

 桜花賞のあと、ダイワスカーレットはオークスを感冒(人間でいう風邪のような症状)で回避。一方、ウオッカは牝馬ながら牡馬三冠レースの頂点であるGI日本ダービー(東京・芝2400m)に挑戦し、見事に勝利。64年ぶりの快挙を成し遂げた。

 3度目の対決が実現したのは、2007年10月。GⅠ秋華賞(京都・芝2000m)だった。前走、桜花賞以来の復帰戦を制してきたダイワスカーレットは2番人気。1番人気はダービー馬のウオッカである。

 桜花賞馬か、ダービー馬か。こんなフレーズが聞かれる秋華賞はもう二度とないかもしれない。レースではまずダイワスカーレットが2番手につけ、ウオッカは後方待機。そして4コーナー手前、残り600mで早くも栗毛の馬体が先頭へ。後方にいたウオッカを尻目に、またもロングスパートを仕掛けた。

「溜めて待つより、動いた方がいいと思って早めにゴーサインを出したんです。今まで一度も止まったことがない馬ですからね」

 これはレース後の安藤勝己のコメント。この馬がそう簡単に止まることはない。そんな鞍上の自信が表れたレースぶりだった。

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