「無敗」が脚光を浴びた2020年。「無勝」のハルウララに会いたくなった

  • 新山藍朗●取材・文 text&photo by Niiyama Airo

 今年の競馬界は"無敗"がキーワードだった。

 史上初めて、デアリングタクトが無敗で牝馬三冠を達成し、コントレイルが父子二代で無敗の三冠馬となったのだから、いつも以上に"無敗"が注目され、もてはやされるのも当然だろう。

 ただ、競馬は"優勝劣敗"が原則とはいえ、勝つことばかりが評価され、脚光を浴びる昨今の風潮に、少し違和感を覚えたりもする。

 そんな時、ふと、その"無敗"とは真反対の存在、言うなれば「無勝」の馬がかつてブレイクしたことを思い出した。

 通算成績は、113戦0勝。これでもかというほど負け続けたが、不思議なことに、負ければ負けるほど人気が上がった。

 ハルウララのことである。

武豊騎手も騎乗したハルウララ。負ければ負けるほど、喝采を浴びた「不思議な馬」だった。photo by Kyodo News武豊騎手も騎乗したハルウララ。負ければ負けるほど、喝采を浴びた「不思議な馬」だった。photo by Kyodo News 1998年から2004年まで地方の高知競馬で奮闘していた。その彼女が今、千葉県の御宿にいるという。そう消息を聞くと、無性に会いに行きたくなった。

 JR外房線・御宿駅からタクシーで10分ほど。馬の訓練や保養などを目的とする小さな牧場『MATHA FARM(マーサファーム)』に、ハルウララは繋養されていた。

 今年、24歳。人間で言えば、70代のおばあちゃんに相当するらしいが、ハルウララはいたって元気だった。現役時代、400kgにも満たなかった馬体重は500kgくらいまで増え、高齢となった最近でも、病気ひとつすることがないという。

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