2020.12.08

ウオッカが主役、阪神JFの衝撃。伏兵から名牝への道を歩み始めた一戦

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 名牝ウオッカには、現役時代に単勝オッズが10倍以上だったことが2回ある。

 1回は、同世代の牡馬トップクラスと戦ったGI日本ダービー(東京・芝2400m)。結果的には3馬身差の圧勝劇を披露したが、戦前の評価は3番人気で単勝10.5倍だった。

 もう1回は、それより前の2歳GI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)。4番人気で単勝11.1倍。ウオッカがもたらした単勝の最高配当となる。

 つまり、この頃のウオッカは、まだ牝馬クラシック戦線では"伏兵"の1頭にすぎなかったのである。

2006年の阪神JFを制したウオッカ 牡馬と見紛うほどのがっしりとした馬体。動かすと、完歩の大きな走りを見せ、そのパワフルな走行からは、とてつもない素質を秘めていることが感じられた。

 しかし一方で、血統面からはさほど大物感を漂わせるものはなく、実際のレースでもやや期待ハズレに終わることがあった。デビュー戦を逃げて勝ったあと、2戦目の500万特別がまさにそうだった。

 スタートで出負けして、それでも最後の直線では追い込みを見せるが、そこから伸びそうで伸びない。結局、前の馬をとらえ切れずに2着に終わった。善戦はするものの、最終的には"勝ち切れない"――そんな詰めの甘さを感じさせるレースぶりだった。

 クラシックで勝ち負けに加わるほどの馬ならば、おそらく差し切れる展開である。仕上がり途上なのか、それとも、そもそも能力的にその程度なのか。いずれにしても、ファンの間で「積極的には買えない」という評価が下された一戦だったことは間違いない。

 それが、続く阪神JFでの単勝オッズで示された。