NHKマイルC、伏兵ラウダシオンを勝利に導いたジョッキーの「選択」 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Kyodo News

 ここで、レシステンシアが突っ張ったのか、ラウダシオンが少しタメたのかはわからないが、再度レシステンシアが単騎先頭となってレースは進んだ。

 前半800mの通過タイムは46秒0。戦前の予想どおり、速いペースとなった。とはいえ、圧勝したGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月8日/阪神・芝1600m)において、45秒5のラップで飛ばしていったレシステンシアにとっては、何ら無理なペースではない。むしろ、持ち味を生かし、自らの能力を発揮するうえでは、絶好の展開と言えた。

 ところが、ここで追走が楽になったのは、ラウダシオンのほうだった。そうして、一段とスピードを上げて、後続に脚を使わせて逃げ込みを図るレシステンシアを横目に、ラウダシオンを操るデムーロ騎手はほんの数秒、追い出しを我慢。レシステンシアの勢いがやや鈍り始めた残り350m付近になって、一気に仕掛けていった。

 レシステンシアも粘りを見せたが、残り200mを切ったあたりからは、両者の脚色が完全に違っていた。ゴールへの推進力で勝るラウダシオンが、そのままトップでフィニッシュした。

 デムーロ騎手に、厩舎サイドと同じくラウダシオンの「ベストは1400m」という思いがあったなら、この競馬はできなかっただろう。もちろん、馬の能力があってこそだが、勝つための手段を講じるうえで、デムーロ騎手は後ろ向きな考えではなく、「ラウダシオンならできる」という前向きな姿勢で臨んだ。そんなジョッキーのファインプレーが光る一戦だった。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る