熱血マンガ『アストロ球団』の血を継ぐ僧侶が占う、混戦ダービーのゆくえ (4ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 
 僧侶がギャンブルなんて、ということで、お叱りの声も多くあることでしょう。しかしながら、私はギャンブルそのものが好きかというと必ずしもそうではなく、パチンコや麻雀、競艇や競輪などには興味を持てません。なぜ競馬が好きかというと、馬と人が織りなすドラマが、心の糧(かて)になるような気がするからです。ヘミングウェイしかり、寺山修司しかり、古井由吉しかり、浅田次郎しかり、ある種の作家たちは、競馬を肥やしに文才を磨いてきたようなフシがあります。「競馬は文学の修行になるはずだ」、そう勝手に信じ込んで、推理小説を読むように競馬新聞を読み、競馬に打ち込んできました。何事も飽きっぽい私ですが、競馬だけは幸か不幸か、三日坊主にはなりませんでした。馬券の腕前はまったく進歩がありませんが、修行はまんざら無駄でもなかったのか、雑誌『優駿』のエッセイ大賞を頂戴することができました。

 ダービー当日、私は高野山でいつものように、参拝に来られた皆様のお接待をさせていただきます。週末の競馬も素晴らしいですが、御縁がありましたら、お大師さまが開山した聖地、高野山にもぜひ、一度お参りください。こうして競馬ファンのみなさんに高野山をご紹介できるのも、再三お話ししているように、何かのご縁です。損得や勝ち負け、そういった価値観から少し離れた非日常を、高野山で体験していただきたく存じます。

 とりあえず、今週末は年に一度の競馬のお祭りです。皆々様のダービーでのご武運を祈願し奉ります。合掌。

(おわり)

(中島龍太郎プロフィール)
なかじま・りょうたろう●僧名は龍範。1976年生まれ、神奈川県横浜市出身。父は『週刊少年ジャンプ』の熱血バトル路線の祖『アストロ球団」などを執筆した漫画家の中島徳博。高野山大学卒業後、密厳院で働きながら中国語を学び、06年より中国福建省に駐在。帰国後も高野山にて奉職。14年に雑誌『優駿』にて「競馬好きのお坊さん的幸福論」で優駿エッセイ大賞を受賞。

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