期待の女性騎手・藤田菜七子がアブダビ遠征の木馬指導で感じたこと (2ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu


 藤田騎手の場合は、今年8月、イギリスのサンダウン競馬場で行なわれた第13戦に参加したのだが、騎乗馬がパドックで暴れて放馬、競走除外となってしまい、主催者の特別措置でファイナルへの出場資格を得ることができた。この催しを主宰するIFAHR(国際純血アラブ競馬連盟)のチェアマンであるララ・サワヤ氏は、先だってフランスで行なわれた凱旋門賞で邂逅した際も藤田騎手のことを気にかけており、今回も大きなハグで彼女のアブダビ来訪を迎え入れた。

 藤田騎手はれっきとしたプロだが、経験という点では、アマチュアといえど他の女性騎手に劣る面もまだまだある。また、現状よりも上を目指すためには、もうひと皮もふた皮も向けなくてはならない。そういった意味からも、今回は意義のある遠征となった。

 アブダビに到着したのはレース2日前、現地時間の11月11日未明で、前日の朝まで美浦トレーニングセンターで調教をこなすなどして、他の騎手たちよりも遅れての現地入りとなった。到着日はアブダビ・ナショナルアーカイブにあるホールでのカンファレンスに参加し、翌日には市内のホテルのボールルームで行なわれたワークショップに参加。ここではジョッキーのボディメイク、木馬などを使ったフィジカルトレーニング、メディア対応の3プログラムを受講した。

「基本的なことは日本の競馬学校と変わらないですが、逆に競馬学校で習った普通のスポーツではめずらしいウォーミングアップが、他の国でも取り入れられているとは思いませんでした。競馬で必要なものは世界共通なんですね」

 藤田騎手は、意外な共通点に驚いたようだった。

 また、木馬を使用したトレーニングでは、アメリカの殿堂入り女性騎手ジュリー・クローンさんから指導を受けることができた。最初に、藤田騎手の騎乗姿勢を見たクローンさんは、首を小刻みに縦に動かしながらひと言。

「美しい。パーフェクト」

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