左回り、距離、今季実績...不安ありのモーリスは天皇賞・秋を勝てるのか (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 振り返れば、昨年はそういった逆境もむしろ糧として跳ね除けてきた。スタートに難を抱えながらも好位につけて押し切った安田記念、その安田記念からぶっつけで、調整不足がささやかれながら挑んだマイルチャンピオンシップ、現地入りしてからの調教のトーンが上がらないままだった香港マイル。そのいずれもが、不安を忘れさせるかのような走りで結果を出し続けていた。だから「この程度」とも表現できる理由で敗れていること自体に、今回もさまざまな不安要素の前に屈してしまうのではないかという懸念を覚えてしまう。

「そもそも絶好調だったとしても、結論としては危ない1頭だと思いますよ、モーリスは。ここまでの戦歴を見る限り、右回りのマイル(1600m)戦こそが最も輝く舞台。対照的な設定とも言える左回りの2000mではやはり狙いづらいです」

 そう指摘するのは、美浦の万馬券王子ことデイリースポーツの豊島俊介記者である。

「まず、左回りが本質的に合わないように思えます。圧倒的な爆発力を見せたダービー卿チャレンジトロフィーや、マイルチャンピオンシップ、香港マイルなどと比較すると、昨年の安田記念、今年の安田記念ともに右回りほどの弾け方ではありませんでした。これは2歳時に出走した、京王杯2歳ステークスでも、出遅れからまったく挽回できずにレースを終えたことから、断言できると思いますよ」

 実は父スクリーンヒーローの父グラスワンダーも、現役時代は左回りが合わないとされてきた。現役通算15戦9勝に対して6回の敗戦のうち、実に4回が左回りの東京コースだった。グラスワンダー自身も説明のつかない強さを誇った面と、脆さを同居させる馬だった。これがモーリスに受け継がれていても不思議はない。

「第二にやはり距離に関してはマイルがベストです。これは血統からは考えにくいかもしれませんが」

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