「千直」マイスターが語る、アイビスSDで勝てる馬の条件 (2ページ目)

 そういう意味でも、枠順以上に重要なのがスタートです。半歩でも早くスタートダッシュを決めることができれば、このコースでは最大の武器になります。馬もそうですが、そこは騎手でも変わるところです。僕も「千直」のスタートのときだけは、いつもと違うスタートの仕方をしていましたからね。

 そして、スタートがカギということは、斤量も勝敗を左右する大きな要素となります。斤量が重いとその分、スピードに乗るのが遅れて、位置取りが悪くなりますから。このレースでは牝馬の活躍が目立ちますが、牝馬が強いのではなく、斤量が軽いから好走できるのだと、僕は思っています。

 ということは、昨年の覇者ベルカント(牝5歳)は今年も有力な1頭と言えます。昨年よりも斤量(55kg)は1kg重くなりましたが、そのスピード能力と持続力、また途中で息を入れられる気性は「千直」向きです。普通の競馬をすれば、好勝負してくれるでしょう。

 唯一、右にモタれるところがあるそうなので、内枠を引いたことが難点。それが"鬼門"になるかもしれません。

「斤量が有利」という視点で見れば、今回56kgで出走するネロ(牡5歳)も有利に映ります。前走の韋駄天S(5月22日/新潟・芝1000m)ではトップハンデの57.5kgを背負って2着。勝ち馬とは4.5kg差、3着馬とも3.5kg差あって、その差を考えれば、勝ちに等しい内容だったと言っていいでしょう。

 また、この馬自身、この「千直」で勝利した2勝がともに57kgを背負ってのもの。それだけ「千直」適性があるということで、斤量56kgで戦える今回は極めて勝利に近い存在だと思います。

 前走、そのネロを破ったのが、プリンセスムーン(牝6歳)。このレースの「ヒモ穴馬」には同馬を取り上げたいと思います。

「千直」では連対100%のプリンセスムーン「千直」では連対100%のプリンセスムーン 前述のとおり、前走ではネロとの斤量差が4.5kg。それが今回は2kg差となるため、その勝利を額面どおりには受け取れないのですが、この馬自身、道中再三詰まる不利がありました。そんなロスのある競馬で差し切り勝ち。前が開いてから一気に抜け出した決め手は、目を見張るものがありました。今、まさに充実期を迎えているのでしょう。

 また、この「千直」では過去5戦して3勝2着2回と、連対100%。しかも、3勝したすべてに騎乗していたのが、今回も鞍上を務める北村友一騎手。おそらく、非常に息が合うのでしょう。再び好レースを披露してくれそうで、本当に楽しみです。

 ところで余談ですが、このレースのレコードホルダーはカルストンライトオです。1回目の勝利の際に記録した、53秒7という時計です。

 当時は8月の中旬に行なわれ、現在よりも早い時期から開催されていた新潟の馬場は結構荒れていました。それに比べれば、今は相当いい馬場で行なわれているので、毎年「今年はレコードが破られるかな」と思って見ているのですが、なかなか破られません。「カルストンライトオは本当に速かったんだな」とつくづく思いますね。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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