競馬とカーレースは似ている。星野一樹がぶっちぎりでダービー予想 (2ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 それからナリタブライアンの存在も大きかったです。三冠(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)をあんな強さで制してしまうのは衝撃的でしたね。三冠なんて簡単に獲れるものではないですから、自分が競馬を見るようになって早いタイミングで、ああいった馬が出現したのは、今思えば、すごく恵まれていたと思いますね。

 ただ、その後になりますと、自分もカーレースの世界に入って、自分のことで精一杯で、しばらく競馬を見ることから離れてしまってたんです。オルフェーヴルとかも知ってはいたんですけど、「そんな馬も今はいるんだ」程度で。そんな折、今から2、3年くらい前に、チームも組んだことのあるレーサーの安田裕信選手から、「星野さん、競馬って面白いですよ」と言われて。彼も競馬ファンだったんですね。そこで、久しぶりに競馬を見るようになったら、以前とは比べものにならないぐらいのめり込むようになりました。

 というのも、自分がレーシングドライバーになった立場で競馬を見ると、昔とは見えてくるものが違ってきたんです。これは競馬も自分たちの競技も似ているぞ、と。例えば、ジョッキーは僕らドライバー、馬は車、調教師は監督、馬主はスポンサー、生産者はメーカー、厩舎スタッフはメカニック、と全部置き換えられるんですよ。だから、レースもそれだけを見るのではなく、チーム全体がレースに向けてどう準備してきたのか、というのも気になり始めました。

 そう考えると、競馬が俄然面白くなってきましたね。レースに出るまで長い時間をかけてきたものが、最後はジョッキーに委ねられる。背負うものを考えればものすごいプレッシャーですし、一瞬のミスでそれも全部ふいになってしまうこともあります。そういった点も共感します。桜花賞で断然人気のメジャーエンブレムに騎乗して負けたルメール騎手が、NHKマイルCを勝った後に見せたホッとしたような表情なんかは、僕らにとってはものすごく印象に残るものでした。

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