NHKマイルC。トウショウドラフタがメジャーエンブレムを脅かす

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 今週は、3歳GIのNHKマイルC(東京・芝1600m)が5月8日に開催されます。

 東京のマイル戦は、芝、ダートともにスタートしてからの直線が長く、ポジション争いはそれほど激しくなりません。その分、思いどおりの位置が取りやすく、ジョッキーとしてはプレッシャーがかからなくて、とても乗りやすいコースです。

 そのため、時に波乱はあるものの、このレースにおいても実力勝負になることがほとんどです。その結果、古くはエルコンドルパサーやキングカメハメハ、ここ10年を振り返っても、ディープスカイをはじめ、グランプリボス、カレンブラックヒル、ミッキーアイルなど、その後のGIや重賞でも活躍した馬たちが勝ち馬に名を連ねています。

 今年は「ハイレベル」と言われている3歳世代。クラシックからの参戦もあって、それら実力馬がどんな競馬を見せてくれるのか、楽しみでなりません。

 まず注目は、何と言ってもメジャーエンブレム(牝3歳)でしょう。なにしろ、2歳女王を決めるGI阪神ジュベナイルフィリーズ(2015年12月13日/阪神・芝1600m)と、年明け初戦となったクイーンC(2月13日/東京・芝1600m)で見せたパフォーマンスは圧巻でした。卓越したスピードと、そのスピードを持続できる心肺能力の高さは、牡馬を含めても「マイル戦ではナンバー1ではないか」と思っていました。

 ところが、肝心の牝馬クラシック第1弾、桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)ではまさかの4着敗戦。その負け方も、腑に落ちないものでした。

 ゆえに、桜花賞に敗れたあとは、その負け方についていろいろと言われてきました。なぜ、あそこまで消極的に控えてしまったのか? これまで、馬群に揉(も)まれる経験をさせてこなかったにもかかわらず、なぜこの大舞台でそうした競馬になってしまったのか? と。

 敗因は決してひとつではなく、さまざまな要素が重なったからだと思われますが、最も影響が大きかったのは、やはり好スタートが切れず、普段よりも少し後ろの位置取りになったことでしょう。それで馬群に囲まれて、動くに動けない状況になってしまいました。

 もちろん、この馬の能力を考えれば、そこで我慢させずに積極的な競馬をさせることもできたでしょう。そうすれば、結果も変わっていたかもしれません。が、そこで躊躇してしまうのが、圧倒的な1番人気を背負った騎手の宿命でもあります。

 GIの舞台で単勝1.5倍。世代ナンバー1の、それも完勝、圧勝が期待されるほどの馬。百戦錬磨のルメール騎手でも、プレッシャーを感じていたのかもしれません。いつもの彼に比べて、消極的なレース運びになってしまったことは確かです。

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