【競馬】秋華賞制覇へ。苦境を乗り越えた良血トーセンビクトリー (4ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 その後も、順調に調教を積んだトーセンビクトリーは、無事に復帰。5月23日には、7カ月ぶりの実戦となる500万下のレースに出走した。しかし彼女は、そこで7着と惨敗し、続く6月のレースでも3着に敗れてしまった。長期休養明けとなる復帰初戦は仕方がないとしても、期待していた2戦目の敗戦には、山口氏もさすがに肩を落としたという。

 もはやトーセンビクトリーの“復活”はないのか――世間の関心も薄れかけていたが、携わった関係者が絶賛する「良血馬」が黙って沈むことはなかった。復帰後、2連敗を喫したものの、7月の500万下特別のレースで快勝すると、昇級戦となる8月の1000万下特別のレースも骨のある古馬相手に完勝。2連勝という快進撃を見せて、三冠最終戦となる秋華賞への道が一気に見えてきたのである。

 そして迎えた、秋華賞トライアルのローズS。トーセンビクトリーは、名手・武豊に操られて、後方から直線に入って鋭進。最後は、勝ち馬タッチングスピーチと、2着ミッキークイーンに屈するも、秋華賞への優先出走権(3着以内)をきっちり確保した。

 昨年11月の骨折から1年弱。期待の「良血馬」が、ついにスポットライトを浴びる表舞台に戻ってきたのである。GI戦線に乗れると信じていた山口氏の“感触”は間違っていなかったのだ。

 山口氏は、秋華賞を前にしてこんな思いを吐露する。

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