【競馬】東京新聞杯は、人気の盲点ヴァンセンヌに妙味あり (2ページ目)

 さて、このレースの「ヒモ穴」には、ヴァンセンヌ(牡6歳)を取り上げたいと思います。

 3歳の4月という、通常よりもかなり遅くにデビューしたヴァンセンヌ。その初陣は未勝利戦(2012年4月15日/阪神・芝1800m)で、相手は既走馬ばかりでした。それでも、見事に快勝。この時点で、同馬のポテンシャルの高さはうかがい知れました。というのも、初の競馬で既走馬相手に勝つということは、その時点で相当な能力がなければできない芸当だからです。

現在3連勝中のヴァンセンヌ(手前のゼッケン10番)。現在3連勝中のヴァンセンヌ(手前のゼッケン10番)。 新馬戦を走った馬は、その経験から2戦目には時計ふたつ(2秒)は詰めると、よく言われます。つまり、未出走の馬が既走馬を相手にするには、そもそも時計ふたつ以上の能力を持っていなければ勝てないという計算が成り立ち、ヴァンセンヌはそれだけ高い能力を秘めていたことになります。

 さらにヴァンセンヌは、2戦目で重賞の京都新聞杯(2012年5月5日/京都・芝2200m)に挑戦しました。もしそこで勝てば、日本ダービー出走という夢にもつながります。要はそれだけ、陣営が可能性を秘めた馬だと評価していたわけです。結果的には惨敗してしまいましたが、そうした陣営の期待の大きさを考えると、将来性はその当時から十分に感じられました。

 ただ、その後は順調な道を歩むことはできませんでした。4歳春には屈腱炎(くっけんえん/競走馬にとって「不治の病」と呼ばれる脚部の病気)を発症。19カ月もの長期休養を余儀なくされました。が、復帰を果たしたヴァンセンヌは強烈でした。

 およそ1年半ぶりに挑んだ実戦で2着と好走すると、以降、500万下、1000万下、準オープンと3連勝。一気にオープンまで駆け上がってきました。デビュー当時に期待された能力と素質が、ついに開花したと言えるのではないでしょうか。

 3連勝のうち、この馬の最高の走りを見せたのは、2走前の2014エクセレントジョッキーズT(2014年11月29日/東京・芝1600m)だったように思います。そう、東京・芝のマイル戦です。サトノギャラント同様、今回の舞台はベストな条件と言えるでしょう。

 母親フラワーパーク(高松宮杯、スプリンターズSとスプリント戦のGI2勝)の性格を受け継いでいるのか、ヴァンセンヌはスピードの勝ったタイプで折り合いが課題となります。折り合いさえつけば、最後は弾けるような末脚を繰り出します。それを見せつけたのが、まさに2走前でした。

 そういう意味では今回、クラスが上がって道中のペースも上がるため、同馬にとっては、競馬がしやすくなると思います。連勝中とはいえ、昇級であることが不安視され、意外と人気の盲点になりそうですから、穴を狙うには面白い存在と言えるのではないでしょうか。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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