【競馬】有馬で今年最後の衝撃を起こすのは、ラストインパクト
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
今年も、有馬記念(12月28日/中山・芝2500m)がやってきました。
一年の始まりとなる金杯や、ホースマンの夢である日本ダービー、そして国内最高賞金のジャパンカップなど、それぞれのレースには、競馬サークルで働く人間や競馬ファンのさまざまな思いが募っています。そして、一年の総決算となる有馬記念には、そうした思いがまさしく凝縮されているように思います。
今年は、そんな思いに応える豪華メンバーがそろいました。
ジャパンカップを制したエピファネイア(牡4歳)をはじめ、そのジャパンカップで引退の可能性があったジェンティルドンナ(牝5歳)とジャスタウェイ(牡5歳)も参戦。さらに、ファン投票1位のゴールドシップ(牡5歳)や、昨年2着のウインバリアシオン(牡6歳)、一昨年の2着馬オーシャンブルー(牡6歳)に、別路線からトーセンラー(牡6歳)も加わって、ダービー馬ワンアンドオンリー(牡3歳)や皐月賞2着のトゥザワールド(牡3歳)といった3歳勢も出走し、暮れの大一番を飾るにふさわしい顔ぶれが集結しました。超一流メンバーの激突に、おそらく馬券を購入できない競馬サークルの方々も、「どの馬が勝つだろうか」と、熱い視線を注いでいると思います。
まず注目すべきは、エピファネイア。今春は能力を出し切れなかったものの、前走のジャパンカップ(11月30日/東京・芝2400m)では驚異的な強さを見せつけました。
同馬のことは僕も以前から高く評価していて、昨年の有馬記念のときにもこのコラムで(2013年12月21日配信。『オルフェに敵なし。有馬記念は「ヒモ穴」に妙味あり』)、もし出走していれば「唯一、オルフェーヴルを負かすかもかもしれない」と綴りました。加えて「新たな"怪物伝説"を作る可能性がある」とも記しました。ジャパンカップでは、そんな"怪物"に成り得る一端を垣間見せたような気がします。
ただ、ジャパンカップで"怪物"を乗りこなしたのは、世界のトップジョッキーである、クリストフ・スミヨン騎手でした。エピファネイアは、相変わらず掛かり気味に走っていたのですが、それを見事に抑え込んで、力を温存させて最後の爆発につなげました。その技術はもちろん、好位をとって我慢させる競馬は、欧州のトップジョッキーならではのものでしたね。
そのため、日本人騎手に乗り替わる今回、"怪物"を御せる(うまく操れる)かどうかが不安視されていました。が、今回、手綱を取る川田将雅騎手なら、心配することはないでしょう。なにしろ今年は、過去最高となる重賞8勝(12月26日時点)を挙げています。牡馬、牝馬のクラシック戦線ではそれぞれ有力馬に騎乗し、熾烈な争いを何度も経験してきました。他のGI戦線でも勝負になる馬に乗って、一定以上の結果を残してきました。初騎乗といっても、問題ないと思います。
ポイントになるのは、1周目のスタンド前。そこを折り合って、うまくクリアすることができれば、再び"圧勝劇"を演じてもおかしくありません。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。