【競馬】阪神JFはココロノアイ。底知れぬ強さに注目せよ (2ページ目)
2戦目の未勝利戦(10月12日/東京・芝1600m)では、牝馬限定戦ということもあって、ほとんど追うことなく快勝しました。そこで、その楽な見た目から、追われたときにはどれくらい弾けるのか、という期待が膨らんだ方も多いと思います。しかし実は、持ったまま勝った馬が、追えばさらに伸びる、という保障はありません。
その点を含めて、ショウナンアデラが次走でどんなレースを見せるか注目していましたが、昇級戦のからまつ賞(11月22日/東京・芝1400m)もあっさり勝利。直線で追われると、それにしっかりと反応して、鋭い伸び脚を見せてくれました。この馬の能力の高さを、はっきりと証明するレースになったと思います。関東馬なので、長距離輸送の課題はありますが、いい状態を保っていれば、好勝負できる一頭だと思います。
さて、このレースの「ヒモ穴馬」には、アルテミスSを制したココロノアイを取り上げたいと思います。
アルテミスSを制したココロノアイ。その勝ち方も衝撃的だった。 初勝利となった未勝利戦(9月6日/新潟・芝1600m)は、とにかく衝撃的でした。デビュー戦でも鞍上を務めた戸崎圭太騎手は、同馬の能力、決め手、というものをよく理解していたのでしょう。自信満々のレースぶりを披露してくれました。
スタートしてからは、終始後方で待機。かからないように、馬群の中でじっくりと構えていました。そして、最後の直線を迎えると外に出し、新潟外回りの利点を最大限に生かして、長い直線を大外から強襲。軽く仕掛けた瞬間に鋭く反応し、馬群を一気に抜き去っていきました。前半、ややかかって必死になだめている場面もあり、気性的な危うさは感じたものの、その決め手と瞬発力、さらに秘めた能力が、存分に発揮された一戦でした。
続くアルテミスSでは、心配された気性の危うさが露呈してしまいました。未勝利戦と同様、後方待機策をとると思われましたが、スタート後の向こう正面でややかかり気味になって、我慢し切れず加速。3コーナーに向かうまでに、一気に3番手まで押し上げていってしまったのです。この時点で相当な脚を使っており、普通ならば大敗を喫してもおかしくありませんでした。
ところが、直線に入ってもズルズルと後退することなく、逆にゴール直前を迎えて再加速。レッツゴードンキの追撃を振り切って、見事な勝利を飾ったのです。確かに、鞍上の横山典弘騎手がなんとか3番手で我慢させた手腕も大きかったと思いますが、ごまかしの利かない東京のマイル戦で、「あんなレースをしても勝ってしまうのか」と、その底知れぬ強さに驚かされました。
今回は長距離輸送もあって、さらに課題は増えますが、再度圧巻のパフォーマンスを見せてくれることを期待したいと思います。
著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。
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