【競馬】日本馬3騎、着外。再認識した凱旋門賞の厚い壁

  • 土屋真光●取材・文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 直前まで仮柵で保護された芝コースいっぱいに広がって、20頭が最後の力を振り絞る。残り300メートルを過ぎて、ラチ沿いから抜け出してきたのは、この日、ここまでに2勝を挙げている、T.ジャルネ騎手騎乗のトレヴ(牝4)だ。昨年はオルフェーヴルですら、手玉に取るような常識破りのひと捲くりで栄冠を掴んだが、今年は堂々の正攻法で馬群の先頭に立った。あとはまるで昨年のリプレイのように、残る19頭がどれだけ追いすがろうともその差は縮まらない。埋まらない2着以下との差は、2馬身という数字よりも長く、大きく見えるものだった。

 史上6頭目、牝馬では2頭目となる凱旋門賞(フランスGI・芝2400メートル)連覇の快挙。手綱を取ったジャルネ騎手も通算4勝目で、歴代最多タイに並んだ。

「世界最強」となって迎えた今年は、ここまで3戦して勝ち星から見放されていたが、大一番で輝きを取り戻し、昨年の圧倒的なパフォーマンスが忘れられないパリの競馬ファンを大きく熱狂させた。

凱旋門賞連覇となったトレヴ。鞍上はT.ジャルネ騎手凱旋門賞連覇となったトレヴ。鞍上はT.ジャルネ騎手 一方、日本から挑んだ3頭は、ハープスター(牝3)の6着を筆頭に、暫定世界ランキング1位のジャスタウェイ(牡5)は8着、ゴールドシップ(牡5)は14着に敗れた。オルフェーヴルやキズナが昨年見せた健闘から、今年こそはと期待がかかった日本調教馬による凱旋門賞制覇は、その重い扉に手をかけるどころか、むしろ遠くなるような現実を突きつけられる結果となった。

「馬はよく頑張った」「力は出し切った」

 各陣営の騎手や調教師たちは、レース後の取材でレースを振り返って応えた。その表情は確かに悔いのようなものはあまり感じられず、充足感すら感じられるものに見えた。しかし、その言葉に若干の違和感を覚えた。

 理由は2つある。ひとつは実はもっとできることはあったのではないか、というもの。もうひとつは、手を尽くしてこの結果ということは、今年の3頭が能力的に凱旋門賞を勝つには及ばないレベルだったのではないか、というもの。どちらも当事者にしてみれば簡単には認められないものであることは重々承知している。しかし、現実に結果が出てしまっている。

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