【競馬】素質に惚れた生産者が初めて別れを惜しんだ「若駒」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第29回

わずか生後2カ月で日本最大のセリ市「セレクトセール」に上場されたディープブリランテ。同馬は、日本有数の大牧場ノーザンファームに落札され、生まれ故郷のパカパカファームから巣立つこととなった。およそ2年後のデビューを迎えるまで、同馬はどんなふうに過ごしていたのだろうか――。

ディープブリランテもかつては牧場の仲間たちと一緒に、夢中で飼い葉を食べて成長した。ディープブリランテもかつては牧場の仲間たちと一緒に、夢中で飼い葉を食べて成長した。 2009年、競走馬のセリ市「セレクトセール」は7月13日~15日に開催された。国内でもズバ抜けた規模を誇るこのセールでは、3日間で延べ476頭が上場され、うち329頭が落札された。パカパカファームで生まれたディープブリランテも、その一頭だ。

 セール2カ月前の5月8日に生まれたディープブリランテは、セレクトセールの当歳馬(0歳)セッションに登場。ノーザンファームが3100万円で落札した。ノーザンファームとは、ディープインパクト(2005年のクラシック三冠をはじめ、GI通算7勝)や、ブエナビスタ(2011年ジャパンカップを含め、GI通算6勝)など、多数の名馬を輩出している日本トップクラスの生産拠点。ディープブリランテは、そんな大牧場の所有馬となった。

 ただし、ディープブリランテはセールのあとも、パカパカファームで幼少期を過ごした。というのも、セレクトセールで落札された当歳馬は、翌年の3月31日まで上場した側(生産した牧場など)が無償で管理するというルールがあるからだ(※落札者が期限より前に引き取ることも可能)。

 ノーザンファームへと移るまでのディープブリランテについて、パカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏はこう語る。

「この時期のディープブリランテについてはよく覚えています。大きなアクシデントはなく、その後の生育も非常に順調でした。その成長過程は私の期待以上でしたね」

 パカパカファームでは月に一度、仔馬たちの体重や骨格などを調べ、成長のデータを取っているが、その成長曲線が「ディープブリランテは素晴らしかった」と、スウィーニィ氏は当時を振り返って目を細めた。

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