【競馬】パカパカファームの基礎を築いた、歴代の「名馬」 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 写真提供:パカパカファーム

 母は、アメリカ産のフリーフォーギブン。同馬の兄には、重賞4勝のアメリカンボス(2001年有馬記念2着)がおり、その血統から「日本への適性」を期待されてパカパカファームにやってきた。彼女と、2004年から日本で繋養されているアメリカ産種牡馬のワイルドラッシュとの間に生まれたのが、アンペアだった。

 それなりの血統背景を持ちながら、同馬の評価は必ずしも高くなかった。競走馬のセリ市『北海道セレクションセール』に上場されたが、アンペアの落札価格は735万円。同年の最高落札価格(4200万円)の、およそ6分の1という価格だった。

 そして、アンペアは中央競馬(JRA)ではなく、地方競馬のホッカイドウ競馬に所属。2008年6月から現役生活をスタートさせた。

 衝撃的だったのは、デビュー戦だ。ダート1000mのレースで、2着を1.9秒も引き離す圧勝劇を演じたのだ。以来、2歳馬のオープンレースで奮闘し、10月にはGIIIのエーデルワイス賞(旭川競馬場・ダート1600m)で1番人気に応えて快勝。このときも、2着に1.3秒差をつける勝利だった。

 さらに、3歳になってからはGⅡの関東オークス(川崎競馬場・ダート2100m)に出走。全国の地方競馬で活躍する有力馬をはじめ、JRAの強豪馬も顔をそろえる中、3着という好成績を残した。その後、古馬になってからもコンスタントに活躍し、アンペアは引退までに4038万円の賞金を獲得した。

「アンペアのように、決して高くない価格で取引された馬の中から活躍馬が出ることは、牧場の評価を高めるうえで非常に重要です」

 そう語るスウィーニィ氏は、アンペアの活躍ぶりを思い出して目を細めた。

 重賞のタイトル奪取とまではいかなかったものの、あと一歩まで迫った馬たちはたくさんいる。その代表は、牝馬のカウアイレーンだ。

 アンペアと同じ2006年生まれのカウアイレーン(母シルバーレーン)は、兄にGI2勝のブラックホーク(父ヌレイエフ)、姉にピンクカメオ(父フレンチデピュティ)がいる、いわば"良血"。父親が、鳴り物入りで種牡馬デビューを飾ったキングカメハメハということで、牧場の期待はかなり高かったという。

「ピンクカメオの父親は、ダートで活躍する産駒を多く輩出していたフレンチデピュティ。対してカウアイレーンの父親は、NHKマイルカップと日本ダービーという、芝のGIを2勝したキングカメハメハ。その分、姉よりもさらにスピード豊かな馬に成長すると感じていました。セリ市に出す前から、この馬の将来が非常に楽しみでしたね」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る