【競馬】宝塚記念、「3強」断然ムードを崩す馬はいるのか (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 そこで浮上してくるのが、トーセンラー(牡5歳)だ。前走の天皇賞・春(京都・芝3200m)でフェノーメノの2着となったことや、「3強」以外の馬とのGI実績を比べてみても、「3強」にもっとも近い存在なのは間違いない。ただ、この馬にはそれだけに止まらない魅力がある。

 トーセンラーに「3強」崩しのポテンシャルを感じる最大の理由は、ここにきての同馬の急激な成長だ。何より、1年前と比べて大幅に増えた馬体重(昨年7月に出走した七夕賞が436kgで、今年4月の天皇賞・春が460kg)が、それを物語っている。

 今年2月に行なわれた京都記念(京都・芝2200m)では、約5カ月ぶりの出走で、馬体重は前走からプラス10kgの460kgだった。自身最高体重となったが、休み明けを感じさせない走りで快勝。およそ2年ぶりの勝利だった。

 長期休養明けで出走する馬が、太め残りのため、プラス体重になるのはよくあること。しかしトーセンラーの馬体重は、次走の天皇賞・春でも460kgのままだった。つまりそれは、京都記念における大幅な体重増が、休み明けによるものではなく、成長分であることの証明だ。

 馬体のスケールアップによって、充実した調教も行なえるようになった。関西競馬専門紙トラックマンによると、「今まで抱えていた馬体減りの心配がなくなり、強い負荷をかけた追い切りができているようです」という。実際、1週前追い切りでは、ダートGI馬(東京大賞典)のローマンレジェンド(牡5歳)を相手に先着。レベルの高い調教をこなしている。

 昨年は、一線級が休養し、メンバーが手薄になる夏場の重賞さえ勝てなかったトーセンラー。勝負どころの加速に時間がかかり、ゴール前でやっと追い込むも届かないという、もどかしいレースぶりが続いた。しかし、ハードトレーニングが功を奏したのか、天皇賞・春ではその弱点に変化が見られた。関西競馬専門紙トラックマンが語る。

「トーセンラーに騎乗した武豊騎手は、戦前、大本命馬ゴールドシップの仕掛けを待ってから追い出そうと考えていたようです。ところが、ゴールドシップの手応えが悪いと見るや、目標を前方のフェノーメノに切り替えてゴーサインを出しました。以前なら、そこでモタつく傾向のあったトーセンラーですが、そのときは即座に反応していましたね」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る