【競馬】大混戦の阪神JF。牝馬クラシック戦線の「本命」は現れるのか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan Sports

 だが、「混戦」という評価になってしまうのは、ウオッカ以来のここ数年の勝ち馬が、余りにもスケールが大き過ぎたからだろう。のちに牡馬相手にGIを勝ったり、牝馬三冠を達成したりという面々と比べるのは酷かもしれないが、彼女たちは2歳のこの時期には、いずれ「名牝」に育つかもしれないという、片鱗や期待感を覗かせていた。

 それから比較すると、今年の阪神JFに出走するメンバーには物足りなさを感じてしまう。実績のある上記3頭にしても、これまでのレースぶりからは、そこまでのインパクトや「大物感」というものが伝わってない。「断然」というほどの強さもなく、他馬にも付け入る隙が十分にあることが、ますます混戦模様に拍車をかけている。

 また、ここ数年に比べてメンバーが見劣りするのは、デビュー前から評判の高かった馬が少なく、「役者がそろっていない」というイメージがあるからだろう。

 確かに、アルテミスSで2着に食い込んだアユサンや、GI馬ゴスホークケンの半妹で前走の白菊賞を逃げ切ったディアマイベイビーなどは、ディープインパクト産駒の評判馬ではある。ただアユサンは、アルテミスSで勝ち馬のコレクターアイテムを捕らえ切れなかったのは事実だし、ディアマイベイビーは3戦目の未勝利をやっと勝ち上がった馬で、かかり気味に行きたがる面が解消されていない。2頭とも有力馬ではあっても、実績上位の上記3頭以上に、ここで勝ち負けするには不安や未知数のほうが大きい。

 思えば、今年の2歳戦が始まる前、牝馬で最も注目されていたのは、父ディープインパクト、母エアグルーヴというまさに夢の配合で、セレクトセールで3億6000万円の高値がついたラストグルーヴだった。ところが、そのラストグルーヴはいまだデビューに至っていない。関西の専門誌記者によれば、「体質が弱く、春までにデビューできるかどうかさえわからない」という。

 そのラストグルーヴ同様、今年はディープ産駒の期待馬のデビューが遅れている。そのうえ、ディアデラノビアの半妹にあたるバリローチェのように、デビュー勝ちしてもその後頭打ちであったり、デビュー戦を勝ち切れなかったりという馬が何頭もいる。そうしたディープ産駒の低迷も、阪神JFが「本命なき戦い」とされる要因になっているのではないだろうか。

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