【競馬】ルーラーシップが宝塚記念で証明する、「血」の力 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Nikkan sports

 だが、ふたを開けてみれば、まるで義務づけられた勝利という重圧から放たれたかのような突き抜けぶりで、期待されていた以上に鮮やかな圧勝。待望のGI初勝利を海外遠征で果たすという、大仕事をやってのけた。ちょうど同じ日、勝つことを義務付けられた同じ勝負服の『三冠馬』オルフェーヴルが、天皇賞(春)で予想だにしなかった惨敗を喫した、ほんの数時間後の出来事であった。

 はたして、陣営の、あのもやっとした、自信のなさは一体なんだったのだろうか。物足りない、としたのは本当に物足りなかったのか、それとも、散々本調子でレースに送り出しながらも、辛酸を舐め続けたことへのある種の保険のようなものだったのか。仮に前者だとすれば、それは、多少のことでは影響を受けないこの馬の高いポテンシャルを逆に示すと同時に、ダービー馬とオークス馬という、これ以上ない血の力に拠(よ)るものを証明したものかもしれない。

 宝塚記念はルーラーシップにとって、帰国初戦ではあるが、香港での勝利が「GIではちょっと足りない」馬にちょうどいいレースだった、と言わせないためにも、不甲斐無い走りは見せられないレースとなった。勝って、“邪道の王”の戴冠を目指す。

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