【競馬】桜花賞、「一強」ジョワドヴィーヴルに死角はあるか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 いずれにせよ、チューリップ賞の3着という結果は、そのようないくつかの原因が絡み合って起きたことで「決して力負けではない」というのが、トラックマンの評価だ。

 事実、レース後、福永騎手にも松田博資調教師にも、さらには厩舎スタッフにも、落胆の色はまるでなかった。かえって「直線で馬込みに入れても、ひるんだり、躊躇したりはしなかった。そのことがわかっただけでも収穫だった」とスタッフ同士で話していたほどだという。

 思えば、一昨年の三冠牝馬アパパネも、チューリップ賞は伏兵・ショウリュウムーンの2着に敗れている。それでも、本番の桜花賞は2着以下を圧倒した。所詮、トライアルはトライアル。本番で勝ち負けを意識する馬ほど、トライアルは余裕残しの「トライアル仕様」で臨むため、元来、番狂わせも、断然の本命馬の敗戦もつきものなのだ。

 ならば、先の専門紙トラックマンが言うように、チューリップ賞の敗戦で、ジョワドヴィーヴルの評価を大きく下げる必要はないだろう。ましてや、週末の天気予報から、当日はパンパンの良馬場になると予想される。

 彼女に限らず、重馬場のトライアルで、牡馬、牝馬ともに期待のディープインパクト産駒が思うような結果を出せていない。そう考えると、ディープ産駒は決して重馬場が得意とは言えないだけに、彼女自身も良馬場でこそエンジン全開の期待ができる。

 そのうえ、状態面でも、前回からの上積みが見込めるし、直線で内を突く競馬を経験した強みもある。やはり、今年の桜花賞で、ヒロインに一番近いのはこの馬だ。

 相手も、チューリップ賞は調子がイマイチだった同じディープ産駒のジェンティルドンナ。この馬も、レース前の調教過程で熱発し、直線で内を突いて伸び切れなかった。それでもジョワドヴィーヴルとはコンマ1秒差の4着なのだから能力は高い。

 福永騎手もインタビューで、ライバルとして真っ先に名前を挙げたのが、ジェンティルドンナだった。ただ、たとえそのジェンティルドンナが相手でも、福永騎手は続けてこう語った。
「ジョワドヴィーヴルが負けるところをイメージできない」

「一強」と称された"名牝候補"が、桜花賞でその真価を発揮する。

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