渋野日向子が「やっと落ちた」。コーチが語った予選落ち→優勝の裏側 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 佳境を迎えたのは、最後の5試合目、樋口久子 三菱電機レディス以降になる。鈴木愛が、賞金ランクで首位に立っていた申ジエに競り勝ち、優勝したところで"ドラマ性"は急上昇した。鈴木はさらに、TOTOジャパンクラシック、伊藤園レディスを立て続けに制し、申ジエ、渋野をかわし、賞金女王争いで首位に躍り出た。

 片や、注目の渋野は伊藤園レディスで予選落ちの憂き目にあっていた。ツアーは残り、大王製紙エリエールレディスとLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップの2試合。賞金ランク1位の鈴木と、同3位の渋野との差は、2400万円あまり。もし大王製紙エリエールレディスで鈴木が優勝すれば、渋野が賞金女王の座に就く可能性は完全に消える。

 ツアー全39戦中、29試合目にあたるデサントレディース東海クラシック(9月20日〜22日)で、今季3勝目を挙げて以降、渋野は(国内ツアーで)22位タイ→7位→6位タイ→12位タイ→13位タイ→予選落ち。その勢いは、ツアー終盤を迎えてすっかり鈍っていた。残り2試合。この流れのまま、シーズンを終えてしまうのか。

 全英女子オープン優勝。国内ツアーでも3勝した。賞金ランキングでは、鈴木、申ジエに次いで3位。東京五輪出場枠を巡る争い(世界ランキング)では、鈴木に先行し、出場圏内である15位以内を維持。もちろん、その輝かしい実績が色褪せることはない。

 しかし、今振り返れば、あの流れのままシーズンを終えていたら、今の渋野に抱く"カリスマ性"は、何割か軽減していたと思えてくる。その分、大王製紙エリエールレディスは、渋野の価値を何割か高めたトーナメントだった。

 しかも、名勝負だった。現場で観戦することができた喜びを思わずにはいられないスリル満点の試合となった。

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