「シブコ・フィーバー」に衰えなしも、渋野日向子が振るわなかった理由 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 一方で、気温はグングン上昇した。それでも、大ギャラリーは真夏を思わせる炎天下、岡山が生んだヒロインに熱い視線を送る。黒山の人だかりとはこのことだ。

 この日、一番の見せ場が訪れたのは、16番のパー4だった。そのセカンド。ピンまでの距離は129ヤードで、使用したクラブは「9番アイアンでした」と言う。

 高々とした弾道がほぼ真上から着弾したその先は、まさにピンの根元。ボールはドスンと落ちたあと、微動だにしなかった。こちら側の位置からはピンに対して縦位置だったので一瞬、そのままカップインしたかのように見えた、まさしくスーパーショットだった。

 だが、その直後の17番、パー3で渋野は再びボギーを打ってしまう。下りのロングパットを1ピン以上オーバーし、3パットとした。

「今日、いちばん足を引っ張っていたのはパッティング。ロングパットの距離感が全然合っていなかった。方向性が合っていても、距離感が合わないとカップにかすりもしない。スコアが悪くなっている分、『決めたい』という気持ちが強くなって......、それも(距離感が合わない要因に)あるかもしれません」

 とは、試合後の会見場での渋野の言葉だ。

「身体はまったく疲れていません。飛距離は出ているので、飛距離に(疲れが)現われていないということは『(身体は)大丈夫だ』ということなので。でも、こんなゴルフをしていたら、気持ちは疲れますね。(大ギャラリーを)プレッシャーに感じているわけではないですけれど、見ている人のほうが疲れると思います(笑)」

 壮観だったのは、最終18番(パー5)の眺めだ。左サイドに大きな池がフェアウェーに沿うように延々と伸びる、チェリーヒルズゴルフクラブいちばんの名物ホール。ギャラリーは池とは反対の右サイドを歩くわけだが、渋野が引き連れる大ギャラリーは、その全長525ヤードを延々と何重にも埋め尽くしていた。集まった入場者は1万人を超えていたという。

「見てわかるとおり、全英女子オープンで優勝する前とは(ギャラリーの数が)違うので、"シブコ・フィーバー"はやっぱりうれしいです。ただ"シブコ・渋滞"は、私のせいにしないでください(笑)」

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