【木村和久連載】日・米・英の「ゴルフ文化」を比較して想うこと (2ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 アメリカで好まれるのは、ズバリ、ゴルフを題材にした読み物です。

 村上春樹が敬愛し、翻訳までした作家に、スコット・フィッツジェラルド(1896年、アメリカ・ミネソタ州生まれ)がいます。1920年代の「ジャズ・エイジ()」に活躍した人で、初期の作品に『冬の夢』というのがあって、そこに北部のリゾート地のゴルフ場を舞台とした話が描かれています。
※1920年代におけるアメリカの文化、世相を表する言葉。

 主人公は、ゴルフ場でアルバイトをしている少年、デクスター・グリーン。ある日、彼が働くゴルフ場に、お金持ちのお嬢さんが父親に連れられて遊びにやって来ました。彼は、そのお嬢さんにひと目惚れします。そこでデクスター少年は、「いつか出世して、あの生意気で美しい娘と交際できるように成り上がろう」と誓うのでした――。

 まさに"アメリカン・ドリーム"そのものでしょ。ゴルフは、富とステイタスの象徴として描かれています。

 これだけあからさまに"野心"や"出世欲"を堂々と描けるのは、アメリカならでは。目標、ターゲットに向かって、何の迷いもなくまい進する若者。アメリカの強さの源って、このわかりやすい"上昇志向"なんですよね。

 一方、ゴルフ発祥の地、英国はどうでしょうか。

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