米ツアー1年目、大事な「何か」を失っていた松山英樹 (2ページ目)

  • 武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva
  • photo by AP/AFLO

 結局、松山は4日間で一度もアンダーパーを記録できなかった。初日から3日目までが「71」、最終日は「73」と崩れた(パー70)。最終戦では「楽しんでプレイ」したいと言っていた松山だったが、終始険しい表情を浮かべ、ラウンドを終えたあとも、自らに対する怒りを抑え切れない様子だった。メディア対応でも、「パット? 知らない。(悪くても)もういいです。22位という結果? まあ、悔しいですよね」と歯切れが悪かった。

 米ツアー本格参戦1年目というシーズンを振り返っても、松山は不満顔だった。ザ・メモリアルトーナメントでツアー初優勝を飾って、世界ランキングもシーズン前の30位前後から20位まで上昇したが(9月15日現在)、自分に対する厳しい評価ばかりが口をついた。

「優勝もして、トップ10にも何回か入って、結果だけみれば満足できるシーズンに見えるかもしれないけど、自分の中では決してそんなことはない。体の状態がそんなに良くなかったフェニックスオープン(1月30日~2月2日/アリゾナ州)でも上位(4位タイ)に入れているのに、状態が良くなった今、なぜ上位に入れないのだろうって思う。成績が出せないもどかしさをずっと感じていた。(6月に)優勝したあとは、一度もトップ10入りがないし、そんな終わり方で満足できるシーズンとは言えない」

 昨季は、全米オープン10位タイ、全英オープン6位タイ、全米プロでも19位タイとメジャー大会で奮闘した。しかし今季は、メジャー4戦で結果を出すことができなかった(マスターズ=予選落ち、全米オープン=35位タイ、全英オープン=39位タイ、全米プロ=36位タイ)。それもまた、不満の一因となっているという。

「メジャー大会に調子を合わせるのはすごく難しいこと。でも昨季は、自分はどの試合に出てもトップ25を外さないようなゴルフをしていた。調子が良かったとは言えないけど、それでも安定した戦いができる"何か"を持っていた。その"何か"がないと、今季のメジャーのように崩れて終わってしまうことが多い。"何か"というのは別にはっきりしたものではなくて、自分の中でのチェックポイントというか、こうしていけばどうにかなる、というもの。それが昨年はあったけど、今季はケガの影響もあって、知らぬ間に(体を)かばってボールを打っていたからか、(立ち返る場所が)なくなってしまった。体が治っても、そのかばうような動きがスイングに出てしまい、それがまたすごくショックだった。その動きを直そうとしても、なかなかうまくいかなくて......。とにかく、スイングのフィーリングを早く取り戻して、自分が次にやりたいことができるようにしたい」

 もちろん、この1年で収穫もあった。松山自身、米ツアー参戦前に課題に挙げていたアプローチだ。

「ツアー選手権でも難しいアプローチが冴えていた。それは、確かに良かった点だと思います。これまではラフからのアプローチが嫌で、そこから逃げるようなゴルフをしていた。でも今では、それしかいいところがないくらい、ラフからのアプローチは本当にいい。だから、どんどん攻めていけるようになった。そういう意味では、さらにアプローチの精度を高められれば、また優勝が近づいてくると思う」

 何はともあれ、米ツアー本格参戦1年目でツアー1勝を挙げて、最終戦のツアー選手権出場を果たした。賞金ランキングも27位と、申し分ない成績を残した。それでも、満足せずに「もっともっと練習しないとダメ」という松山が、来季はどんなプレイを見せてくるのか。10月9日に早くも開幕する新シーズンに向けて、期待が膨らむ。

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