【ゴルフ】有村智恵が米ツアー1年目で超えられなかった壁 (2ページ目)

  • 武川玲子●文 text by Takekawa Reiko
  • photo by Getty Images

 予選落ちを重ねるなど、不本意な成績が続いた。6月、ニュージャージー州で開催されたショップライト・クラシックでは、初めて優勝争いに絡んだが、その際も、大事なところでショットが乱れ、パットに泣いた。最終日、強風の中で一時は首位に立ちながら、9番パー5で第2打をクリークに打ち込んでダブルボギー。後半に入ってからは、2度の3パットでスコアを落として、優勝争いから脱落した。

「いいプレイはできたけれども、パットは50点。勝負どころで(3パットにした)ああいうパットを決められないと、どう考えても優勝できない」

 パットが決まらないのは、地域ごとに変わる芝目や、トリッキーなグリーンへの対応なのか、あるいは米ツアーを見据えて、オフの調整中に変えたストロークが馴染んでいないからなのか、有村は悩み、試行錯誤を繰り返してきたが、いまだ解決には至っていない。

 それでも7月には、微かな光が差し込んだ。ようやく、自らが今やるべきことが見えたのだ。

「問題はパットであってショットではない。(ショットは)自分のフィーリングにあったフェードでしっかりと攻める。もっとシンプルにゴルフをしよう」

 有村はそう決意すると、少しだけ"迷路"から抜け出した。予選落ちもあって、好不調の波はあるものの、パットの不調がショットにまで影響することが少なくなり、調子のいいときはトップ10入りする試合も出てきた。

 また、厳しい状況の中でも、有村の表情は常に明るかった。目先の結果だけにこだわっていないからだ。有村のビジョンは長期的なもので、ずっと先を見据えている。

「自分の中では、すごくいいシーズンを送っています。正直、結果が出ないのは苦しいけれども、1年目だからこそ、やれていることがある」

 スイングコーチのいるフロリダ州オーランドに拠点を置いた有村は、オフウィークには自宅に戻って、アメリカ生活をエンジョイしている。英会話のレッスンやアメリカ人の友人から料理を習うこともあるという。キャディーの仲間たちと集まって、大騒ぎもする。これから、アメリカで長きにわたって活躍するためのベースを、着実に築いてきた。

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