【ゴルフ】全米プロで花開くか。「AON」になくて、松山英樹にあるもの (3ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 また、松山は技術レベルも申し分ない。かつて、中嶋常幸は「メジャーでは、勝負どころでフルショットせずに、番手の大きなクラブでコントロールしてグリーンに落とせる技術がなくてはいけない。そして、それがきちんと実行できないと、メジャーでは勝てない」と話していたが、松山にはそれができていた。全米オープンや全英オープンでも、ひとつのクラブで何段階かに分けたコントロールショットを披露。タテの距離をきっちり合わせて、ボールをフェアウェーに、そしてグリーンにことごとく運んでいた。

 全米オープン、そして全英オープンで、精神的にも、技術的にも、世界で通用することを証明した松山。一昨年のマスターズでローアマを獲得したあと、数カ月間、一切クラブを握らずに作ってきた下半身も継続して強化し、肉体的にもたくましさを増した。

 8月8日(から11日まで)に開幕する、全米プロ選手権。今年最後のメジャーに挑む松山には、優勝するチャンスが十分にある。いや、今の松山には、早々にメジャータイトルをとって、さらにひと皮むけてほしいとさえ思う。

 今年、井戸木鴻樹(いどき・こうき)がシニアメジャーの全米シニアプロを制したことで、他の日本人選手の意識が変わった。もちろん、井戸木自身も「メジャーチャンピオン」という肩書きを背負ったことで、下手なプレイはできないと、ゴルフに対する姿勢が一変した。松山には同様の変化を起こしてほしいし、メジャーチャンピオンになることで、松山自身のゴルフの幅をさらに広げてもらいたい。

 自分が死ぬまでにマスターズの表彰式に日本人が参加するなんて、100%あり得ないと思っていたが、それを実現してしまった松山は、世界アマチュアランキングでも1位になっており、グローバルな視点で見れば"エリート"。「AON」が果たせなかったメジャー制覇を成し遂げても不思議はなく、それだけの器の持ち主だと思っている。

 全米プロ選手権の会場は、ニューヨーク州にあるオークヒルCC。1989年全米オープンでジャンボが優勝争いに加わった舞台である。最終日の14番ホール、トップに並んだジャンボは、年に数回しか使用しない2番アイアンでティーショットを打ってミス。それが響いて、ボギーを叩いて後退した。

 当時、ジャンボは42歳。試合後、「あと、10年若かったら......」と言った。はたして、21歳の松山英樹はどんなプレイを見せてくれるのか。楽しみである。

三田村昌鳳(みたむら・しょうほう)
1949年2月24日生まれ。週刊アサヒゴルフを経て、1977年に編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。ゴルフジャーナリストとして活躍し、青木功やジャンボ尾崎ら日本のトッププロを長年見続けてきた。1974年、初めてマスターズを取材。以来、毎年オーガスタに足を運んでいる。(社)日本プロゴルフ協会理事。

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