【ゴルフ】全米プロで花開くか。「AON」になくて、松山英樹にあるもの (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 翻(ひるがえ)って、松山は21歳である。若くて、体力もある。この差は、とてつもなく大きい。

 さらに、青木やジャンボが海外メジャーで好結果を出したのは、プレイヤーとして円熟期のときで、目いっぱいのプレイをしてのものだったが、今の松山にはまだまだ伸びしろがある。土から掘り出してきたばかりの野菜というか、地方から都会に出てきたばかりの若者のような"土臭さ"がある。そんな"原石"が磨かれ、洗練されていったら、この先、どんな輝きを放つのか、といった楽しみがある。

 それでいて、すでに松山は今季デビューしたばかりの日本ツアーで2勝を記録。全米オープン、全英オープンでは、ともにベスト10入りを果たした。その実績だけでも、見通しは明るくなる一方だが、メジャー制覇への期待感を一層膨らませたのは、全米オープンと全英オープンで見せた、松山のプレイぶりだった。

 まず、際立っていたのは、青木も絶賛した順応性である。いろいろな環境にもすぐに適応できてしまう、吸収力が松山にはある。アメリカの芝にも、リンクスコースにも、難なく対応できたのは、その証拠だ。

 それは、彼の持って生まれた感性だと思う。動物的な嗅覚というのか、自分の目から入ってくる情報や、肌に触れる風の感覚や、地面を踏んだ足の裏から得られる感触によって、「こう打とう」とか「こう攻めよう」と直感的に決めることができる。その際、ポアナ芝だからこう打とうとか、ベント芝だからこう攻めようとか、理屈が先行することはない。松山は、自分の経験と感性を存分に生かしてゴルフをしている。

 その点は、松山の代名詞でもある「鈍感力」にも通じる部分だろう。要するに、松山の鈍感力とは、自分のゴルフにかかわりのないことは、すべて捨てられるということ。よって、自分の"ゾーン"というものを作り出すのがうまい。だから、松山はどんな環境に置かれても、余計なことに神経を使うことなく、自分のゴルフに徹することができる。

 結果、理屈にとらわれることはないし、周りの選手に惑わされることもないので、初の全米オープンでは、日本と違う芝、環境に戸惑うことなく、淡々とプレイしていた。全英オープンでは、ローリー・マキロイやフィル・ミケルソンと同組でも、何ら動じることはなかった。松山の偉大なる鈍感力は、まさに最大の強みと言えるだろう。

 そのうえで、松山にはものすごい闘争本能がある。終盤のホールでスコアを伸ばせるのは、その証。ひとつでもいいスコア、ひとつでもいい順位であがりたい、という意識が非常に強い。今どきの若い選手は、そうした一生懸命さをかっこ悪いと思いがちであるが、松山は最後の最後まで、懸命かつ貪欲にプレイし続ける。そのスタイルにはとても好感が持てるし、勝利に執着しているからこそ、世界で、そしてメジャーでの可能性を感じる。

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