ブラジル代表GKアリソンはコンマ何秒の隙を見逃さない 元日本代表GK南雄太も現役時代に取り入れた高等テクニック (3ページ目)
【新しいドイツ人GKコーチの存在】
最後に南氏が解説してくれたのは、最近のアリソンのプレーに変化が見え始めている、ということだった。いったい、どんな変化なのだろうか。
「アリソンは自分から仕掛けていくタイプ、という話をしましたが、最近のプレーを見ていると、必ずしも仕掛けるだけではなくなっています。以前なら自分から前に突っ込んでいたシーンでも、止まったままブロックするシーンをよく見るようになりました。
先ほども『能動的なプレーにはよし悪しがある』と言いましたが、たしかにアリソンはアグレッシブなプレーでビッグセーブを見せることがある一方、意外とあっさりゴールを許してしまうケースもありました。当然ですが、自分から仕掛けるということは、そこにはイチかバチかといったリスクを伴うわけです。
そのアリソンが能動的なプレーを我慢して対応するようになったので、なぜなのかと思っていろいろと調べてみました。すると、昨年の夏からリバプールにファビアン・オッテという新しいドイツ人GKコーチが就任していたんです。
彼の経歴については省略させていただきますが、このGKコーチは異色の人物として知られていて、独特の哲学とメソッドを持った若いGKコーチです。個人的にも注目している人物なのですが、おそらく彼の指導によってアリソンのプレーに変化が生まれ、さらに進化したように思います。
わかりやすく言えば、能動的に行く時と、あえて行かない時の判断が向上したことで、ますます相手にとっては厄介なGKになったという印象です」
アリソンが現在32歳であることを考えると、今後もGKとしてさらなる進化を遂げる可能性は高いと見ていいだろう。来シーズンのアリソンも要必見だ。
(第7回につづく)
【profile】
南雄太(みなみ・ゆうた)
1979年9月30日生まれ、東京都杉並区出身。静岡学園時代に高校選手権で優勝し、1998年に柏レイソルへ加入。柏の守護神として長年ゴールを守り続け、2010年以降はロアッソ熊本→横浜FC→大宮アルディージャと渡り歩いて2023年に現役を引退。1997年と1999年のワールドユースに出場し、2001年にはA代表にも選出。現在は解説業のかたわら、横浜FCのサッカースクールや流通経済大柏高、FCグラシオン東葛でGKコーチを務めている。ポジション=GK。身長185cm。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
【図】GKアリソン擁するリバプール2024-25基本フォーメーション
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