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デニス・ベルカンプの超絶トラップに全員が酔いしれた アーセナル時代の相棒アンリも絶賛「神の領域に達していた」 (4ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【アンリとのコンビでファンを魅了】

 名伯楽の言葉を借りるまでもなく、ベルカンプはアーセナル史上に残るファンタジスタであり、ティエリ・アンリとの2トップは流麗なプレーで多くのファンを魅了した。

 オランダ人のファンタジスタが時間と空間を創り、フランス人のエースが驚異的なスピードと天性のクールで得点を重ねていく。あの当時、ポゼッション志向に思えたアーセナルも決してボール保持にはこだわらず、前に急ぐような攻撃もしばしば仕掛けた。それはベルカンプとアンリがお互いの感性を理解し、ふたりだけに通じる距離感で攻撃をつかさどっていたからにほかならない。

 2003-04シーズン、アーセナルは前人未到の無敗でプレミアリーグを制した。最大の殊勲者は30ゴールで得点王を獲得したアンリかもしれない。ただ、無敗優勝の立役者は『L'Equipe』(フランスの日刊紙)のインタビューにこう答えている。

「ベルカンプは『神の領域』に達していた」

 プレミアリーグ優勝は3回。オランダ代表ではメジャータイトルに手が届かなかった。しかし、ボールコントロールだけで見る者に魔法をかけた選手は、過去・現在を問わずベルカンプただひとりだ。彼の名前と美しいプレーは、人々の記憶に永遠に刻み込まれる。

著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

【図】ベルカンプが現在のアーセナルの布陣に入ったら…

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