検索

【プレミアリーグ】冨安健洋がアーセナルを離れても「都落ち」ではない ワールドカップを見据えて環境を変えるのもアリ (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【インテルの3バックはどうか】

 世界一のプレー強度を誇るプレミアリーグにあって、サイドバック(SB)は肉体的に負荷がかかる。オーバーラップ、アンダーラップ、ビルドアップと仕事は多岐に渡る。もちろん、CBも巨漢FWとの1対1を余儀なくされ、身体のあちらこちらが削られる。ラクなポジションではない。

 だが、肉体的な負担はSBを下回る。ケガのリスクがつきまとう冨安にすれば、CBのほうが好ましくはないだろうか。試合に出てナンボがプロの世界とはいえ、ケガを回避するためのポジション選択も考慮すべきだ。右SBはベン・ホワイト、ユリエン・ティンバーに任せ、冨安はCBで定位置確保を目指してもいいだろう。

 志(こころざし)の高い冨安はあくまでも、アーセナルでの定位置奪還を目標に設定しているに違いない。たとえばリバプールに移籍したとしても、フィルジル・ファン・ダイクのパートナーとして問題なく務まるし、高い汎用性を好むジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)のお眼鏡にだってかなうだろう。ファビアン・シェアとダン・バーンが三十路に入り、彼らを脅かす若手が現れていないニューカッスルでも、冨安は喉から手が出るほどの人材だ。

 ただ、フルシーズン・フル稼働に目標を変更して、少しでもケガのリスクを抑えるという選択が冨安の周辺から浮上してきても不思議ではない。プレミアリーグほどの強度ではないが、チャンピオンズリーグに常時出場できるクラブなら、冨安のプライドも刺激されるのではないか。

 たとえばインテル。今シーズンのCLでは決勝に駒を進め、2試合合計7−6という永世に語り継がれるバルセロナとの準決勝を迎えるまで、12試合5失点(クリーンシートは8試合!)という堅牢を誇るイタリア屈指の名門だ。

 シモーネ・インザーギ監督はローテーションを巧みに活用し、選手の健康管理にも気を配る。「いい流れを遮断しかねない」と、メンバーをほぼ固定するアルテタ監督とは対極のプランニングだ。冨安の現状にも適しているし、もともとセリエA全体が冨安の能力を認めている。

 また、アレッサンドロ・バストーニ、フランチェスコ・アチェルビ、バンジャマン・パヴァールを軸に構成されるインテルの3バックは堅固だ。なかでもCL準決勝第2戦で貴重なゴールを決めたアチェルビはすでに37歳。度重なるケガから立ち直り、いまやインザーギ監督の懐刀と称されるまでになった。冨安にとって「素敵な先輩」がプレーしている。

2 / 3

キーワード

このページのトップに戻る