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チャンピオンズリーグ決勝 欧州で最も調子のいいPSGと最も勢いのあるインテルの対決を占うポイント (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【「PSGの左」対「インテルの右」】

 ラミン・ヤマル(スペイン代表)がウインガーとして高い位置を張る右サイドは、相手の左WBフェデリコ・ディマルコ(イタリア代表)を専守防衛に追いやることに成功した。終始、低い位置に押しとどめることができたのは、ヤマルの右攻めが抑止力になっていたからだ。

 だが、左はそうなっていなかった。ラフィーニャ(ブラジル代表)がサイドの高い位置でウイングプレーを発揮する機会はほとんどなかったからだ。ヤマルと左右対称に位置する選手には見えなかった。

 バルサの攻撃が7、8割方ヤマル側(右)からだったことも輪を掛けた。逆サイドで構えるラフィーニャは、自ずとゴール前に詰める役割を担うことになった。右からゴールに迫っているとき、左に張っているわけにはいかなかったのだ。つまり、ダンフリースの攻め上がりに蓋をする役割を担えなかった。

 だが、決勝を戦うPSGの攻撃は左右対称だ。アーセナルとのセカンドレグでは左からフヴィチャ・クヴァラツヘリア(ジョージア代表)、ブラッドリー・バルコラ、デジレ・ドゥエ(ともにフランス代表)がスタメンに並んだ。交代でウスマン・デンベレ(フランス代表)とゴンサロ・ラモス(ポルトガル代表)が投入されたが、バランスはまったく崩れなかった。

 中でも左を主戦場とするクヴァラツヘリアは典型的なウインガーだ。縦方向へのベクトルが強く働く選手である。さらにその下には、ヌーノ・メンデス(ポルトガル代表)という強力な左SBも構えている。さすがのダンフリースも簡単には攻め上がれないものと推測される。実際はどうなのか。「PSGの左」対「インテルの右」は、試合を占う大きなポイントのひとつになる。

 もうひとつの対立軸はサッカーのスタイルだ。PSGの監督ルイス・エンリケは元バルサの監督であり選手だ。インテルとの決勝は元バルサ人にとって雪辱戦になる。「打倒インテル」と、普通の監督より燃えているに違いない。

 バルサは欧州サッカーにおいては攻撃的サッカーの旗手。旗振り役だ。その先駆者として知られるヨハン・クライフは、大人数で後ろを固めるイタリア式サッカーをひどく嫌った。筆者のインタビューでも、明確にそう答えている。今回のインテルは準々決勝に進出した8強のなかで唯一、5バックを敷く。守備的サッカーと言われても仕方がないチームだ。バルサはそのチームに打ち負ける形で屈した。ルイス・エンリケにとって心穏やかなはずはない。

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