ヴィニシウスは絶滅危惧種のドリブラー サッカーとフットサルの二刀流が独特のリズムを生み出した (3ページ目)
【幼少からフットサルを経験させるべき】
絶滅危惧種ともされるヴィニシウスの独特なドリブルだが、果たして、日本人でもそのテクニックを習得することは可能なのだろうか。
「たしかに環境が人を育てると思うので、ヴィニシウスはブラジルだからこそ生まれた選手だと思います。
ブラジルでは幼い頃から、週に何日かフットサルをプレーすることが一般的になっていて、そのなかで習得したテクニックをサッカーの世界でそのまま使っているケースがよく見受けられます。ネイマールはその代表格と言えますが、そういう意味では日本でも小さい頃にサッカーだけでなく、週に何日かはフットサルをプレーすることも、ひとつの方法だと思います。
僕自身も選手生活の晩年にフットサルを経験して、それまで知らなかったテクニックや戦術的な要素を学ぶことができました。それを体験しているので、現在は子どもの指導のなかでもフットサルのエッセンスを交えて指導するようにしています。
ただ残念なのは、まだサッカーの指導者のなかにはフットサルから学べることが多いことを認知していないので、頭ごなしに否定されてしまうことがあるようです。でも、ブラジルだけでなくヨーロッパのスペインやポルトガルなどでも、子どもの頃にフットサルを経験させることが浸透していて、世間的にもそれが認知されています。
フットサルはGKを含めて5人でプレーするので、狭いコートのなかではドリブルで相手を剥がすことが重要になります。そのなかで、どのようにして剥がすのか、いつどこで剥がすのか──といったテクニックを自然と身につけられる環境があります。
ブラジルのジンガとは言わないまでも、相手と対峙した時にフットサルのテクニックを使うことで、ヴィニシウスのドリブルに近いテクニックは学べると思いますね」
サッカーとフットサルの二刀流。育成年代でそれが一般化すれば、日本にもヴィニシウスのようなドリブラーが育つのかもしれない。
(第6回につづく)
【profile】
松井大輔(まつい・だいすけ)
1981年5月11日生まれ、京都府京都市出身。2000年に鹿児島実業高から京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)に加入。その後、ル・マン→サンテティエンヌ→グルノーブル→トム・トムスク→グルノーブル→ディジョン→スラヴィア・ソフィア→レヒア・グダニスク→ジュビロ磐田→オドラ・オポーレ→横浜FC→サイゴンFC→Y.S.C.C.横浜でプレーし、2024年2月に現役引退を発表。現在はFリーグ理事長、浦和レッズアカデミーロールモデルコーチ、U-18日本代表ロールモデルコーチ、京都橘大学客員教授を務めている。日本代表31試合1得点。2004年アテネ五輪、2010年南アフリカW杯出場。ポジション=MF。身長175cm、体重66kg。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
【基本フォーメーション】ヴィニシウスとコンビを組むアタッカー陣は?
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