ヴィニシウスは絶滅危惧種のドリブラー サッカーとフットサルの二刀流が独特のリズムを生み出した (2ページ目)
【ヴィニシウスを象徴するテクニック】
「具体的には、相手と対峙して自ら仕掛ける時によく見せるボディフェイントです。ブラジルでは『ジンガ』と呼ばれる体の動きですが、そのボディフェイントによって相手の重心を動かして、傾いた瞬間に逆をとって素早く抜き去っていくパターンです。
それに加え、高速のシザースフェイントを使って相手の体勢を崩すパターンもある。なので、なおさら対峙する相手が重心をキープするのは難しくなってしまいます。
僕も現役時代に意識していたことですが、鬼ごっこで相手に触られないようにするイメージで、常に相手の逆をとって抜いていくドリブルですね。しかも、ヴィニシウスは突出したスピードもあるので、相手からすると、不用意に間合いを詰めるとあっという間に背後を取られてしまいます。
間合いをとればジンガやシザースで重心を動かされ、食いつけばスピードにやられてしまうので、相手にとってはとても対応が難しいドリブラーだと思います」
松井氏は、そんなヴィニシウスのプレースタイルを象徴するテクニックがあると指摘してくれた。それが、左サイドのタッチライン際でよく見せるプレーだ。
「対峙すると対応が難しいので、当然ながら相手には前を向かせたくないという意識が働きます。しかしヴィニシウスはそれを利用して、タッチライン際でボールをもらう時にトラップすると見せかけて、ボールに触れずにスルーをして反転。一気に加速して相手を置き去りにするテクニックをよく使います。
相手は自分に対して斜めから寄せてくるので、縦パスを受ける場合は効果抜群で、スピードのある選手にとっては特に効き目があると思います。もし相手が寄せて来なければ前を向いて勝負を仕掛け、前を向かせないように寄せてきたらスルーでかわせばいいので、どっちにしても優位性を保てるわけです。
ドリブルは、自分の特長や武器を最大限に生かすためのテクニックを使い分けることが重要になりますが、まさにヴィニシウスはそれを実行していると思います」
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