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「久保建英は革命家」と絶賛する現地紙 下部組織出身の若手選手を啓発するプレーを連打

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 4月6日(現地時間)、ラ・リーガ第30節。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は、ラス・パルマスの本拠地に乗り込み、1-3と快勝を収めている。ヨーロッパリーグ(EL)とスペイン国王杯では惜しくも大会敗退が決まったが、"再起をかける一戦"として、これ以上ない内容だった。リーグの順位も8位に浮上し、5位、6位に与えられるヨーロッパのカップ戦出場権に望みをつないだ。

" 未来を懸けた一戦"で格の違いを見せたのが、久保建英である。過密日程のターンオーバーで、63分からの出場になったが、右サイドを中心に敵を蹂躙。追いすがるラス・パルマスからしたら、行く手に立ちはだかる魔神のように見えたはずだ。

 ラス・パルマス陣営も、必死になって久保を止めようとしていた。久保と同年同月の生まれで、バルセロナの下部組織「ラ・マシア」育ちの左サイドバック、ミカ・マルモル(久保はジュニア年代の在籍、マルモルはユース年代の在籍で、かぶってはいない)は、久保を抑えようと死力を尽くしていたが、ことごとく無効化されてしまい、最後は哀れにも足をつって倒れ込み、苦痛で顔をゆがめていた。

ラス・パルマス戦の後半18分から出場、勝利に貢献した久保建英(レアル・ソシエダ)photo  by Ion Alcoba Beitia/Getty Imagesラス・パルマス戦の後半18分から出場、勝利に貢献した久保建英(レアル・ソシエダ)photo by Ion Alcoba Beitia/Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る「革命家」

「エル・ムンド・デポルティーボ」紙は、久保のプレーをそう評している。

「日本人ウインガーはピッチに出てくると、試合の流れを変えた。フットボーラーとして格調高い時間だった。敵チームにとっては何光年も先の存在であることを証明した」

 これ以上ない絶賛と言えるだろう。だが今や、こうした論評は当たり前のようになっている。過去の日本人選手に対し、こうした手放しの賛辞が与えられることは少なかった。やや大げさに言えば、日本人、アジア人に対する"メディア差別"が霧散したのだ。久保は偏見を打破した日本人サッカー選手と言える。

 ラス・パルマス戦、久保はアディショナルタイムを含めても30分ほどしかピッチに立っていない。しかし、エースとして模範を示した。若い選手たちに(彼自身も23歳と十分に若いのだが)指南するプレーだった。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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