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悪童ロマーリオのケタ外れのゴール感覚 「30ゴールは約束してやる」バルサ1年目でいきなり得点王

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

世界に魔法をかけたフットボール・ヒーローズ
【第6回】ロマーリオ(ブラジル)

 サッカーシーンには突如として、たったひとつのプレーでファンの心を鷲掴みにする選手が現れる。選ばれし者にしかできない「魔法をかけた」瞬間だ。世界を魅了した古今東西のフットボール・ヒーローたちを、『ワールドサッカーダイジェスト』初代編集長の粕谷秀樹氏が紹介する。

 第5回に取り上げたい選手は、ブラジルを代表するFWロマーリオ。1980年代後半から1990年代にかけて、世界のフットボールシーンの中心には常にこのストライカーがいた。自由奔放な性格でトラブルも少なくない悪童だったが、なぜか憎めない男だった。

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ロマーリオ/1966年1月29日生まれ、ブラジル・リオデジャネイロ出身 photo by Getty Imagesロマーリオ/1966年1月29日生まれ、ブラジル・リオデジャネイロ出身 photo by Getty Images 切れ味鋭いドリブル、素早いターン、間合いの測り方が絶妙で、ダイレクトにゴールを目指すプレーも魅力的だった。エラシコで3人のディフェンダーに尻もちをつかせたこともあった。そのうえ、常に強気。マーカーに挑みかかるアタックは、167cmという小兵のハンデを補って余るほどだった。

 ロマーリオ、である。

 ブラジルのヴァスコ・ダ・ガマで大活躍したのち、1988-89シーズンからオランダのPSVアイントホーフェンに新天地を求めた。その時のロマーリオをフォローした恩人がフランク・アルネセン(元デンマーク代表MF)である。温厚な性格で人望が厚く、ブラジルから不慣れなオランダにやってきた22歳の若者に気を配っていた。

 1988年のトヨタカップ(対ナシオナル・モンテビデオ)で来日した際、アルネセンにロマーリオの印象を聞いた。

「ピッチでも練習でも偉そうなんだよ。何度注意しても遅刻するしね。俺が一番上手なんだから、いつ来たっていいだろって感じなんだよ」

 アルネセンに話を聞いてから30余年が過ぎているが、ロマーリオを語る優しい表情を、今でも鮮明に覚えている。

 なお、このトヨタカップでゴールを決めたロマーリオが真っ先に駆けつけたのは、負傷のためにスーツ姿でベンチに座っていたアルネセンだった。優しい先輩と憎めない(?)後輩の関係は、まだ続いているのだろうか。

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著者プロフィール

  • 粕谷秀樹

    粕谷秀樹 (かすや・ひでき)

    1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン社)など多数。

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