三笘薫に何が起きているのか チームは6連勝、ゴール数増加の陰で失われた「縦突破」
8位ブライトンが9位のフラムをホームに迎えた一戦。結果は試合終了寸前に得たPKをジョアン・ペドロ(ブラジル代表)が決め、ブライトンが2-1で逆転勝利を飾った。
左ウイングとして先発した三笘薫は後半41分までプレー。10段階で独自に採点するならば6弱の出来映えだった。ミスらしいミスは皆無だったが、ウイングとして、またアタッカーとして、相手に大きな脅威を与えることができずに終わった。なにより目を惹くプレーを披露することができなかった。
左右の比較でいうなら、右ウイングとして先発し、後半31分までプレーしたヤンクバ・ミンテ(ガンビア代表)のほうがウイングプレーヤーとして見せ場を多く作った。
ここ数試合、ウイング色を抑えるかのようにプレーしていた三笘。大外で構える時間が長いミンテに対し、長い時間、内側で構えていた。それはベンチからの指示なのか、個人の判断なのか。
サイドに適性がない選手がウイングをまかされたとき、居心地のよさを求めて内側に入るケースがある。古くは中村俊輔、最近では香川真司、南野拓実がそれに該当するが、三笘にその癖はない。内に入るなと言われれば左のサイドアタッカーに徹し、スペシャリストとしてプレーすることができる。右のミンテと比較すると、監督から同じタスクを課せられた選手には見えなかった。
だが、フラム戦の三笘は、少なくともポジション的にはミンテと左右対称の関係にあった。最近では珍しく、多くの時間でタッチライン際に張って構えた。ウイングらしいプレーを発揮する舞台は整っていたかに見えた。
フラム戦に先発、後半41分までプレーした三笘薫(ブライトン) photo by ZUMA Press//AFLOこの記事に関連する写真を見る にもかかわらず、不発に終わった。たとえば、前半19分。左の高い位置でボールを受けたとき、縦に抜ける勝負を仕掛ける環境は整っていた。ところが三笘は前進を止め数秒間停滞する。左SBペルビス・エストゥピニャンの攻撃参加を待った。背後を駆け抜けたエクアドル代表SBのその鼻先にパスを通したが、それはフラムのDFに見抜かれていた。意外性に欠ける連係プレーとなった。早いタイミングで三笘が仕掛け、縦勝負を挑んだほうが相手を驚かすことができていたはずだ。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。