三笘薫がスーパー先制弾! 技術の粋が詰まっていたチェルシー戦の4タッチ (2ページ目)
【注目すべきは2タッチ目】
トップスピードで走りながら。これだけでも相当な難易度である。だが三笘はこれを連続動作にした。トラップした瞬間、わずかに浮いたボールを、次の瞬間、右足アウトでトラップした。まるでチャロハーの体勢の背後を取るように。この切り返しのモーションに技術の粋が詰まっていた。
3タッチ目でボールを前方に押し出すと、そこはペナルティエリアの1メートル手前だった。目の前に構えるのはチェルシーのGKフィリップ・ヨルゲンセン(U-21デンマーク代表)ただひとり。三笘は狙いすましたように、4タッチ目を右ポスト脇に吸い込まれるシュートとした。
GKのキックから6秒弱後の出来事だった。電光石火のプレーとはこのことを指す。三笘はゴール裏のサポーター席に向けて、右手を耳にかざして三笘コールを促すと、その背中を追いかけた味方選手が次々と、荒々しく抱きついた。
サッカーにおいてこれ以上、シンプルなゴールはない。GKキックから6秒弱の間に4タッチ。ボールの軌跡もゴールまでほぼ一直線である。にもかかわらず、ゴリ押し感はゼロ。力づくで奪ったゴールではない。そのわずか4タッチの間に三笘らしさは凝縮されていた。
背後から約60メートル飛んできたボールを右足のインフロントで完璧に止めるトラップ技術もさることながら、それ以上に注目したいのは2タッチ目だ。その結果、チャロハーの逆を取ることに成功。フリーで抜け出すことになったワンタッチだ。サッカーが相手の逆を取る競技だと言われる所以だ。トップスピードの状態で逆を取ることができれば、相手は瞬間的に無力化され、数メーター置いていかれる。そこに正確な技術が絡めば鬼に金棒だ。これぞ三笘の魅力だと考える。
完璧主義者でもある。勝率の低いプレーにはチャレンジしない。荒々しさに欠ける理由だとも言えるが、それを前面に出す場合は絶対的な体力が求められる。無い物ねだりをするより、得意分野を磨いたほうが進歩は早い。自分を知っているそんなクレバーさも見逃すことはできない。
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