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三笘薫がスーパー先制弾! 技術の粋が詰まっていたチェルシー戦の4タッチ 

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 プレミアリーグ第25節。前節、ノッティンガム・フォレストに0-7で大敗し、順位を10位まで下げたブライトンは、ホームで4位のチェルシーと対戦した。

 ご承知のとおり、プレミアリーグは世界各地の一流選手が集う欧州最高峰の舞台だ。三笘はそこでまたしてもスーパーゴールを披露した。

 三笘が魅せたスーパーゴールで記憶に鮮明なのは、2022-23シーズンのリバプール戦(FAカップ)のゴールと、2023-24シーズンのウルヴァーハンプトン戦のゴールである。

 前者は左SBペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)から送られてきたフワリとした浮き球を右足のアウトでリフティング。フェイントを入れて方向転換すると、同じ右足のアウトでシュートに及び、ネットを揺るがした。後者はピッチの中央を疾風のごとくドリブルで前進。ウルブズ守備陣4人の間隙を切り裂きながら蹴り込んだ右足の一撃になる。

 鮮やかで美しい。豪快というよりテクニカル。なにより身のこなしが滑らかで俊敏、そして華麗である。170センチ台の見るからに軽量級。日本人ばなれした肉体の持ち主である大谷翔平らとはタイプがまるで異なる。そんな一般的な体格の日本人が、世界から集まった190センチ級の大型で屈強なディフェンダーをヒラヒラと舞うように、まさに柔よく剛を制する姿は、八艘飛びで知られる牛若丸的な味わいがある。日本人選手の可能性を膨らませ、勇気づける力もある。

チェルシー戦で見事なトラップから先制ゴールを決めた三笘薫(ブライトン)photo by PA images/AFLOチェルシー戦で見事なトラップから先制ゴールを決めた三笘薫(ブライトン)photo by PA images/AFLOこの記事に関連する写真を見る チェルシー戦の前半27分の出来事だった。GKバルト・フェルブルッヘン(オランダ代表)が、ペナルティエリアライン上からロングキックのモーションに入ろうとした瞬間だった。ハーフウェイライン付近で構えていた三笘は、フェルブリュッヘンとアイコンタクトをかわす。そして対峙する相手の右SBマロ・ギュスト(フランス代表)と右CBトレヴォ・チャロバー(元U-21イングランド代表)の間を割るように走った。

 キックは延びてチャロバーの背後を突く。だが三笘の足は速い。ぐんぐんと加速するスピードに怯えたのか、チャロバーにはボールを目で追う余裕が失われていた。落下地点は相手のペナルティエリア手前10メートル付近。三笘はフェルブリュッヘンが蹴った約60メートルに及ぶロングキックを右足のインステップに乗せるようにふわりとやさしくトラップした。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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